NYインディ・ロックの新進気鋭アーティスト、Mitskiとは

シンガー・ソングライターのミツキは、彼女の意欲的な作品『ピューバティー2』のために、自己の内面を告白するような曲作りの技術を磨いてきた。(Photo by Ebru Yildiz)

2014年の『Bury Me at Makeout Creek』でブレイクしたMitskiに、ニューアルバム『ピューバティー2』の制作について話を聞いた。

DIYで作られた会場やベースメント・ショーなど、さまざまなパンク・シーンで経験を積んできたミツキ・ミヤワキ。レコーディングやパフォーマンスを行う時だけファースト・ネームを使うミツキは、霧雨のある日、音楽制作とは関係のないブルックリン南部の倉庫にぶらり立ち寄った。ラッカ・チョコレート・ファクトリーで、ミツキは愛用していたバスと引き換えに、ヘア・ネットとゴム手袋を手に入れ、チョコレート作りの前に、その精製プロセスについて学んだ。彼女は繊細な手書きで"最年長、しょうが"などと名前をつけながら、慎重にチョコレート・バーを作る。自身の痛切な、時として驚くほど率直なパンク・ソングにも、同じように細心の注意を払ってきた彼女は、14年のアルバム『Bury Me at Makeout Creek』でこれらの曲を発表し、その才能を開花させた。

ミツキの感情に訴える歌詞には不意にシュガーが出てくることがあるので、ラッカは訪れるに相応しい場所のようだ。そんな彼女は、6月17日に強烈な印象のニューアルバム『ピューバティー2』をリリース。その先行シングルである『Happy』では、"幸せが私を訪ねてきた"、"彼は来る途中でクッキーを買ってきた"と感情を擬人化している。だがひねりのあるストーリー・ライン、インダストリアルのようなバッキング・トラック、そして不倫や殺人に直面する40年代のカップルを描いた気味の悪いビデオ映像など、明るい曲とは言いがたい。「この曲の大半は、欧米における典型的な"幸せ"について描いているの。それはエクスタシーと結びつけられて、私たちは常にそういった感情を味わうべきだと考えられているの」ミツキはラッカを訪れた後、お茶を飲みながら語ってくれた。「健全とは言えないわよね、日々の生活にエクスタシーを求めるなんて」

Translation by Aki Urushihara

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