映画『レジェンド 狂気の美学』:トム・ハーディが一人二役で演じるロンドンの伝説のギャングの物語

『レジェンド 狂気の美学』のエミリー・ブラウニングとトム・ハーディ (C)Universal Pictures

トム・ハーディがロンドンの伝説のギャング、クレイ兄弟を一人二役で演じる。

トム・ハーディは、繊細な役柄から激しくキレる役柄まで、どのような役であろうと徹底的に演じることができる俳優だ。ハーディはそうした両極はもちろん、その間のさまざまな役柄を演じられる手腕を『レジェンド 狂気の美学』で見せることになった。この映画で彼は瓜二つの双子を演じている。どのような双子か。ロナルドとレジナルドのクレイ兄弟で、1960年代のロンドンを支配していたギャングだ。要領の良い性格のレジナルドは、フランシス(エミリー・ブラウニング)に対しては、その残酷な気質を一時的に隠せるほど冷静だ。まるでロミオとジュリエットのように窓越しにフランシスに求婚する。

脚本家であり監督のブライアン・ヘルゲランドは、映画の語り手をフランシスにしているが、ロナルドに声をかぶせるのは意味がないため、その仕掛けは効果が得られていない。ゲイのロナルドは、誰もが認めるように正気ではなく、サディスティックな暴力行為や、ブースビー卿(ジョン・セッションズ)とテディ・スミス(素晴らしい演技のタロン・エガートン)らとの乱行に抗えない怪物である。無論、ロナルドは彼の母親(ジェーン・ウッド)を愛している。だが彼のアメリカ人マフィア(チャズ・パルミンテリ)に対する強烈な怒りは、レジナルドを狂気へと追い込んでゆく。その苛立ちが頂点に達したとき、兄弟は殴り合いを始める。

愚かしく見える時には、しばしば実際その通りである。ピーター・メダックによるスパンダー・バレエのゲイリーとマーティンのケンプ兄弟主演の映画『ザ・クレイズ 冷血の絆』(1990年)にはより強い物語性があった。ヘルゲランドの脚本は、良いところも悪いところもあり、オスカーを受賞した『L.A.コンフィデンシャル』の水準には達していない。それでもハーディだけでも一見の価値がある。安全ネットを設置せずに飛び、それを楽しんでいる。観れば、それを感じるだろう。



『レジェンド 狂気の美学』 
★★1/2
トム・ハーディ主演、ブライアン・ヘルゲランド監督
YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほかにて全国ロードショー

http://www.legend-movie.net/

Translation by Kise Imai

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