ボブ・ディラン、モハメド・アリを追悼:「最も優れた人間だった」

(Photo byFrank Lennon/Toronto Star via Getty Images/ Stanley Weston/Getty Images)

「地球上の全ての人間の心を喜ばせることを偉大だというのなら、彼こそが本当に偉大な人物だ」

モハメド・アリおよびボクシングの長年のファンであるボブ・ディランが、伝説のファイターへの追悼文をしたためた。「地球上の全ての人間の心を喜ばせることを偉大だというのなら、彼こそが本当に偉大な人物だ」。ディランは、米国時間で6月3日(金)に74歳で亡くなったアリについて、自らのウェブサイトに記している。「あらゆる面でアリこそが最も勇敢で、最も親切で、最も優れた人間だった」

若い頃にボクシングをかじったことのあるディランは、『デイビー・ムーアを殺したのは誰?』(1963年作品)から、殺人のえん罪で収監されていたプロボクサーのルービン・"ハリケーン"・カーターに着想を得た『ハリケーン』(1976年作品)に至るまで、長きにわたってボクシングにインスピレーションを求めてきた。
(訳注)デイビー・ムーアは1988年に28歳の若さで不慮の事故死を遂げたプロボクサー

また、ディランの1964年作品『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』には、カシアス・クレイ(当時)にインスパイアーされた歌詞がある。「今朝僕は、シャドウボクシングをしていた。この調子ならカシアス・クレイとも戦えると思った」。1964年2月にアリがソニー・リストンを下して、初めてヘヴィー級チャンピオンになった後にディランが録音した曲だ。

くんくん、くんくん。におうぞ、カシアス・クレイ。オレ様がやってきたぞ。
26、27、28、29、お前の顔をオレのようにしてやろう
5、4、3、2、1、カシアス・クレイ、逃げた方がいいんじゃないのか
99、100、101、102、ママにも分からないような顔にしてやる
14、15、16、17、18、19、お前の内臓をきれいに直撃してやる

7年後、ディランはマジソン・スクエア・ガーデン(以下MSG)の大観衆に混じって、"ファイト・オブ・ザ・センチュリー(世紀の一戦)"と銘打たれた、1971年のジョー・フレイジャー戦を観戦している。アリにとってプロ転向後の初黒星となった試合だ。

『ハリケーン』を収録したディランのアルバム『欲望』リリース直後の1975年12月、ニューヨークのMSGで行われたディラン主宰のローリング・サンダー・レヴューのステージに、ルービン・カーターの妻と娘を引き連れてアリが登場した。このチャリティコンサートで、アリはMSGのステージ上から獄中のカーターに呼びかけを行った。これに先立って、ディランは獄中のカーターを慰問している。バックステージでは、ディランとアリが一緒に過ごしていたという。

伝説のボクシング王者、社会運動家、モハメド・アリは74歳で逝去した。

Translation by Kuniaki Takahashi

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE