RUN-D.M.C.のDMCが語る、過去、現在、未来

(Photo by Frank Micelotta/ImageDirect/Getty Images)


ー完全に復調したということでしょうか?

まだ本調子には程遠いけど、奇跡的な回復力だってよく言われるよ(笑)鬱気味だった頃に自分が孤児だったという事実を知らされたりと、いろいろと個人的な問題を抱えていた時期があったんだ。でもそれを乗り越えた時に、人生の新たな目標を見つけ出した気がした。93年頃はすごく辛かったよ。アルバムが売れなくなり、RUN-D.M.C.の人気に陰りが見えているのは明らかだった。ヒップホップは新たな時代を迎えていたんだ。ブート・キャンプ・クリックやダスEFX、エリック・サーモン、それにウータンなんかが勢いづいてた頃さ。オニックスもそうだな。いつもピート・ロックは否定するんだけど、彼がプロデュースした『ダウン・ウィズ・ザ・キング』がなかったら、俺たちのキャリアは完全に終わってた。でもその頃から、俺の私生活は崩壊していったんだ。声が出なくなり、自分が孤児だったという事実を知らされ、ジャム・マスター・ジェイが悲劇的な形でこの世を去り、そして父も他界した。俺はアルコール依存症になり、精神的にも肉体的にもボロボロで、もうどうしていいかわからず自殺を考えたこともあった。そんな時、サラ・マクラクランの『エンジェル』という曲を耳にしたんだ。あの曲は文字どおりどん底にいた俺に、何があっても生き続けるべきだと思わせてくれた。それから少しずつ、俺は自信を取り戻していった。ヒップホップ界最高のMCのひとりとして、まだやるべきことがあると自分に言い聞かせるようになったんだ。

俺はまた音楽からインスピレーションを受けるようになっていった。自分のクリエイティビティが再び目覚めていくのを感じたよ。俺は自分にこう問いかけたんだ。「お前は12歳の頃、自分の曲がチャートにランクインしたりラジオでかかるかどうかなんて気にかけたか?ベッドルームで曲を作ったりリリックを書いたり、絵を描いたりするだけで喜びを感じていたはずだろう?」それから俺は頭を悩ませていたことを曲にしていったんだ。両親のこと、アルコール依存症のこと、自殺願望のこととかをね。

リハビリ施設にいた頃、よくグループ・ディスカッションをやってたんだ。その場である男性がこう言った。「オバマ大統領がこう話していた。『あなたが声をあげる時、それは普段の会話とは異なる響き方をする』」それを聞いてハっとしたよ。そして自分がやるべきことをやり始めた時、声が戻ってきたんだ。それから俺は時々講義をするようになり、中学や高校でのレクチャーに多くの時間を費やすようになった。「DMC、クイーンズはホリス育ち、チキンとコラードグリーンが大好き」っていう俺のラップに、子供たちは大喜びしてた。今思えば俺は声を失いかけたことで、逆に自分の本当の声を発見できたのかもしれない。ランDMCのMCとしてではなく、ダリル・マクダニエルとしての声をね。今の俺は檻から解放された猛獣みたいなもんだ。最近こんなライムを書いたんだ。「自惚れてるわけじゃないぜ 自信に満ち溢れてるだけさ カニエ・ウエストのほうが自信家だって? コモン・センス(常識)をもってコモンを口撃する俺の方が上さ やつらは壁を越えようとするが俺はすり抜ける ビートに乗っかる俺を誰も止めることはできない 俺はいつだって現在進行形 お前のケツを蹴り上げてやる」これから世に出る曲のリリックは大体そんな感じさ(笑)

Translation by Masaaki Yoshida

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