巨大化するフェス産業、プラスチック汚染に立ち向かう音楽業界の今

ジャック・ジョンソンと妻のキムは、彼が行う全てのツアーで使い捨てのプラスチックを無くす取り組みをしているだけでなく、地域社会における社会変革を促進するために、夫婦でハワイにジョンソン・オハナ・チャリタブル・ファウンデーションを設立した。ジョンソンはまた、RPMやリバーブ、その他の持続可能なコンサート・ワーキング・グループを結成するためのグループと提携を結び、興味を持ったアーティストを支援するための指導や最善の措置の提案、あるいはプラスチックを削減するという任務を果たす場所をプロデュースしている。

マルーン5やベン・ハーパー、ケブ・モ、ボニー・レイット、ドーズ、ジャクソン・ブラウン、アテナ、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、モキシー・ライア、その他大勢のアーティストが、ツアーや会場の為の観客のポリシー両方の実践を通じてツアーにおけるプラスチック汚染を削減しており、また一部の人はこの問題について会場に訪れた観客に直接語りかけている。

この運動に彼らのファンは参加している。2014年にローリングストーン誌は、プラスチック・ポリューション・コアリション(PPC)とスティーリーズ・ドリンクウェアと連携したボナルー・フェスティバルのプログラム、レフィル・レボリューションを調査した。同プログラムは、詰め替え可能なステンレス製のカップやボトル、容器などを購入するか持参することを働きかけるものだ。イベント主催者は専用スタッフやボランティア、情報の追跡など一連の取り組みに多額の投資を行った。2015年のクリーン・ヴァイブス・プログラムでは、収集した廃棄物の総量が驚くことに67パーセントも減少し、埋立地行きとなる廃棄物を約200トン削減した。初年度の2014年は、廃棄物となるボトルやカップ40万個分を削減し、2015年にはその影響はほぼ倍増した。今年彼らは、参加者のために再利用可能なカップやボトルの数を増やすと同時に、PPCはアーティストやマネジメント・チームと共に、プラスチックを使用しないツアーの構想を議論し続けている


ザ・フレーミング・リップスのウェイン・コインとリユースカップ"zero waste cup"(Brandise Danesewich)

ボナルー・フェスティバルはこのような挑戦をするアメリカ最大の野外フェスだが、唯一のものではない。アウトサイド・ランズ・ミュージック・フェスティバ ルでは、堆肥にすることができるか、生物分解が可能な調理器具や食品容器だけを使用している。アウトサイド・ランズとボナルー・フェスティバルにおけるリサイクルと堆肥化の取り組みはとても大きいものだが、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)によると、アメリカ全土に置かれたリサイクル用ごみ箱に捨てられたプラスチックのうち、実際にリサイクルされるのは約30パーセントでしかなく、風に飛ばされたり野生動物が引っ張り出したりしなければ、残りは埋立地のごみとなって終わる。



「プラスチックは役立たずだ」と書かれたTシャツを着るPPCのアンバサダーを務めるベン・ハーパー(photo by Danny Clinch)

一部のフェスではプラスチックを全く提供していない。オレゴン州ポートランドで開催されるピッカソン・ミュージック・フェスティバルは、ビヤガーデンでの使い捨てカップを完全に中止し、代わりにビールの割引特典付きのステンレス製カップを販売している。また、その他のイベントでは給水ステーションに投資することを選んでいる。15万人を越える来場者を抱えるイギリスを拠点とするグラストンベリー・ミュージック・フェスティバルでは、詰め替え可能な水のボトルを推奨し、屋台であらゆるプラスチック容器や食器を配ることを禁止している。

サンタバーバラ・ボウルのような会場では、マイ・パイント・アンド・ミープロジェクトを通じて、来場者にマイカップを持参してもらうように働きかけている。ギターやベースなどの弦を手掛けるメーカーのダダリオは、テラサイクルと連携して世界初の弦のリサイクル・プログラム、プレイバックを立ち上げた。ごみの生産と回収を追跡するフェスや会場はますます増えており、それぞれのウェブサイト上で、名誉の印として廃棄物削減の統計情報を掲載している。

気候変動に取り組むための運動と同様に、アーティストやイベントの制作チーム、会場の管理者たちは、源でそれを食い止めることでプラスチック汚染に正面から取り組むために、お互いに協力している。変化を受け入れよう。私たち全員が役に立つことができる。チケットを持って旅の計画を立てよう。素晴らしい歌に夢中になるのは良いけど、マイカップを持参するのをお忘れなく。

Translation by Yuka Ueki

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