膨大なコレクションを誇るボブ・ディランのアーカイヴ展がタルサで開催


[上]ピーター・フォンダとデニス・ホッパーからの電報 [下]『サブタレニアン・ホームシック・ブルース』の歌詞 (COURTESY OF THE BOB DYLAN ARCHIVES)

コレクションに携わる人間が値段について論じることは禁じられている。しかし、1500万~2000万ドルと伝えらえる売値については、誰も異論をはさまないはずだ。「高い買い物だったことは事実だ」とアパム学長。だがもし個別に売られていたとしたら、「100倍にはなっていただろう」

研究者らにとって目玉となるのは、手書きの歌詞だ。それには、アルバム『血の轍』制作時に残された2冊の小さなノート、ウォルドーフ=アストリアホテルのメモに記された『自由の鐘』の歌詞、1989年作『ディグニティ』のおびただしい草稿などが含まれている。また『サブタレニアン・ホームシック・ブルース』の原案には、実際の楽曲に反映されなかったフレーズも多数見られる。「歌詞だけでもものすごい量だよ」とチャイケン。「これらを読むと、ディランが作家としていかに自制心が強く、また言葉選びに真剣であったかがわかるはずだ」

コレクションには音楽キャリアに関するものだけでなく、さまざまな私物も含まれる。ニコ、スタンダップ・コメディアンのレニー・ブルース、ビートニクの詩人であるアレン・ギンズバーグの番号が記された60年代半ばの電話帳の他、『ナッシュヴィル・スカイライン』発表時にジョージ・ハリスンが送った賛辞の手紙、花をプレゼントしてくれたことに対し、バーブラ・ストライサンドがしたためたお礼のはがきなど、ファンにとっては非常に興味深いものばかりだ。

コレクションに触れるには、タルサまで実際に足を運ぶ必要がある――おそらくこれが今回の一件の核心だ。カイザー財団はウディ・ガスリーに関しても膨大なコレクションを有している。だが、ディランのアーカイヴの方が観光客の増加に一役買ってくれるだろう。「そうなってくれることを希望している」とレヴィット。「これを機会に、ニューヨークやロサンゼルス、ロンドンへの直行便が運行されるようになったら嬉しい」


Translation by Masaaki Yoshida

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