40年以上を経て再び世界が注目する、虫プロ製作のエロティック長編アニメとは

1973年に公開した非常に奇妙で理解しがたい主人公、成人向けアニメーション映画『哀しみのベラドンナ』が、ついに米劇場で公開を迎えた。リストアの指揮を執ったシネリシャス・ピクスの副社長を務めるデニス・バルトークは「これは初めての、真のエロティック長編アニメーションだ」と語る。(photo by Cinelicious/Everett Collection/ (C)虫プロダクション)

1973年に公開された、エロティシズム溢れる劇場用アニメーション映画『哀しみのベラドンナ』。長い年月の間忘れ去られていた同作が4Kにリストア(修復)され、ついに観客の前にその姿を現す。

1973年のベルリン国際映画祭では、過度に熱狂的な親達が子供に見せるための『家族向け』のアニメ作品を期待して、最近公開された珍しいタイトルの日本のアニメ映画『哀しみのベラドンナ』を観るためにドイツ国内の映画館に押し寄せていた。90分の間、彼らは『となりのトトロ』のように子供たちの気晴らしになるような何かを期待していたのだが、その代わりに野蛮な初夜権による集団強姦で冒頭のシーンからクライマックスを迎え、ヒロインの脚の間に徐々に入り込む男根の形した悪魔や、合間に差し込まれる非常に奇妙で理解しがたい乱痴気騒ぎや戦争を非難するような瞑想的なシーン、階級組織、フェミニズムを目にする羽目になった。

山本暎一が監督した稀に見るサイケデリックな本作品は、公開当時ほとんど注目を浴びることは無く(あるいはあからさまに揶揄され)、以降もこの大作は40年以上に渡り忘れ去られ、作品を制作したスタジオが廃墟と化すと、数年間で熱狂的なアニメファンの間で海賊版としてたらい回しにされる骨董品となった。この作品が米国で公開されたことはこれまで無かったが、シネリシャス・ピクスが同作をリストアし、新しい世代のカルト映画ファンやアニメ愛好家たちに衝撃を与える準備が整った(5月13日にロサンゼルスのシネファミリーで公開され、7月12からiTuneで配信される予定だ)。

物語のあらすじは次のようなものだ。新婚夫婦のジャンヌとジャンは領主に結婚の祝福をしてもらうとするが、悪意に満ちた領主と家来は花嫁であるジャンヌを強姦する。身も心も傷ついたジャンヌは、男性器の形を装って現れたいたずらな悪魔と会話をし始める。やがて戦争が起きて大半の男性(その地域の摂政も含め)が戦闘に出向くと、ジャンヌは悪魔と契約を交わして信じられないほどの力を手に入れ、村でもひときわ目立ち恐れられる存在となる。ジャンヌ・ダルクにも似た復讐の天使は、やがて支配階級に対する反乱の先頭に立つことになる。

Translation by Yuka Ueki

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