プリンスの長年のパートナーが語る『パープル・レイン』をめぐる狂騒、ワーナーとの確執

―『ウィー・アー・ザ・ワールド』への参加を拒否したことも大きな話題となりました。当時の状況について、印象に残っていることを話してもらえますか?

あの日の夜は外出を控えてくれと懇願したよ。彼は夜のロサンゼルスの街を出歩くのが好きで、カルロス・アンド・チャーリーズ・オン・サンセットというクラブがお気に入りだった。エディー・マーフィーやジム・ブラウンもよく出入りしていた、ロサンゼルス随一のセレブ御用達のクラブだったんだ。私やバンドのメンバーもよく足を運んでいたよ。プリンスが『ウィー・アー・ザ・ワールド』に参加しなかった理由はただひとつ、彼が自分のやりたいことだけをやりたいようにやる一匹狼だからだ。プロジェクトのコンセプトに賛同していなかったからじゃない。その証拠に、彼は自身の曲を提供している。彼は集団に混じって行動するタイプじゃない、ただそれだけだよ。

プリンスは自身の作品にゲストを参加させることはあっても、その逆のケースはほとんどなかった。あったとすれば、それは個人的な繋がりか、あるいはそのアーティストをサポートしたいという強い思いからだろう。当時メディアが毎日のようにマイケル(・ジャクソン)とプリンスの確執を記事にしていたことも関係していたかもしれない。マイケルとクインシー(・ジョーンズ)が主導していたあのプロジェクトに参加すれば、自分は引き立て役にさせられると感じていたんだろう。あまり知られていないが、それが彼が参加しなかった理由のひとつだと私は思っているんだ。

とにかく、私は彼にこう言ったんだ。「今日は外出を控えてほしい。あのプロジェクトへの参加を断って外で遊んでいたと報じられたら、君のイメージが著しく傷つくことになる」彼がホテルの部屋から出ないように、私たちは見張っていないといけなかった。夜中の1時か1時半頃、彼がさすがに諦めたようだと判断した私は、妻のグウェンと共に自分たちの部屋に戻り、バンドのメンバーたちもそれにならった。しかし夜中の3時頃、プリンスのボディガードのビッグ・チックが電話してきたんだ。「寝てる場合じゃないぞ。俺たちの仲間がムショに送られた」私は蒼ざめた。今となってはよく知られていることだが、私たちが引き上げた後にプリンスは外出し、出先で大勢のパパラッチに取り囲まれてしまった。あまりにしつこかったフォトグラファーに肘打ちを食らわせた彼のボディガードは投獄され、我々は翌日に保釈金を支払うはめになった。その後は私たちが懸念したシナリオどおりになってしまった。アフリカの子供たちを飢餓から救うという素晴らしいコンセプトに賛同した音楽業界の大物たちがスタジオに集まっていた頃、参加を断ったプリンスはナイトクラブで羽目を外し、ボディガードがパパラッチに暴力を振るって刑務所に送られたという、大衆が飛びつきそうなストーリーがあらゆるメディアのトップを飾った。実際にはその事件と彼があのプロジェクトに参加しなかったこととは無関係だったが、私は頭を抱えずにはいられなかった。

Translation by Masaaki Yoshida

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