カセットテープは死なない!復活の理由に迫る

取引相手がインディーズバンドであろうとジャスティン・ビーバーであろうと関係なく、ナショナル・オーディオ・カンパニーはほとんどの場合で、カセットテープ1本につき2ドル以上を求めることはない。しかもこの価格、ラベル付け、ラベルのデザイン、梱包、発送にかかる料金が全て含まれている。カセットテープの復活は、デジタル時代において音楽を手元に残すということに特に大きな意味がある。カラフルで手で触ることができる磁気テープメディアであるカセットテープのリールが回転する様子は、スチームパンクに似たものがあり、音楽配信サービスには期待できない、芸術的でレトロな格好良さを感じることができる。

作業場でマスターテープはまず、6つの録音スタジオの中の1つでエンジニアたちによって音源が複製され、次に古い機械にセットされる。90分用の カセットにテープが巻き取られるには、10秒もかからないという。組み立てラインの最後には、ドゥーム・ゴースト、ロズウェル・キッド、ウィークエンド・ アンド・ヘルカイトといったバンドのカセットテープが完成していた。「有名になることを夢見ているバンドです」とステップ氏は言うと、次のように続けた。 「デビューテープを作らずして、夢は叶いませんからね」

 一方、モダンなカセットテープの文化の発信地は、カリフォルニア州フラトンのサウス・ステート・カレッジ大通りにある小規模ショッピングセンター内にある。タトゥーショップとマッサージ店の間にあるバーガー・レコーズは、独自のレーベルを店内のカーテンの奥にある散らかった部屋で展開している。夜にはその部屋のカウチで、オーナーの一人が寝泊まりしているらしい。創設者のシーン・ボーアマンとリー・リカードは、アナハイム高校時代の友達で、一緒に地元で スリー・メイクアウト・パーティーというパワー・ポップ・バンドを組んでいたという。

2人がレーベル展開を決断したのは2007年のことだが、バーガー・ レコーズのカセットテープはそれ以来、カリフォルニアの数多くの新進気鋭のローファイ・バンドたちが必ず通る道となっている。「立ち上げたばかりの時は俺たち、カセットテープの時代が復活するとか知らなかったんだ」ボーアマン氏はこう話してくれた。「イケてるアルバムをカセットテープにしたかったんだ。ほら、誰もやってなかったから」

Translation by Miori Aien

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