レニー・クラヴィッツが語るプリンス:「彼は師であり親友、自分の一部が死んでしまったみたいだ」

ペイズリー・パークで過ごした時間は驚きの連続だった。『チャーリーとチョコレート工場』とか、『オズの魔法使い』とか、そんな雰囲気の場所だ。実物より大きなものが混ざり合う、彼の世界そのものだ。ドアをくぐった瞬間にプリンスの世界に入るのさ。クリエイティヴであるためだけに存在する。音楽のためだけの世界だ。そこでの演奏はすべて録音された。時々そこのスタジオに行っては僕のバンドや彼のバンドのメンバーとジャム・セッションをしたよ。インストで演ってグルーヴを練るんだ。プリンスはそれを録画して録音した。そうしたものを彼は"記念の品"と呼び、演奏が終わったらカセットテープを手渡してくれる。CDにする前のものだ。そして、いつもこう言うんだ。「これは君だけのだよ。マスター・テープは俺が持ってる。鍵を掛けてしまっておくよ」って。

彼はそれを他人の目や耳に晒したり、儲けるために利用したりするのを嫌がった。俺らだけのためのものだった。他の誰にも分からない、自分たちしか分からない瞬間さ。クールだよね。ビジネスがすべてってわけじゃないんだ。そうすること自体に価値がある。それはもはやアートだし、刹那、記憶、体験なんだ。美しいと思うよ。

自分の曲を管理することは、彼にとってとても重要だった。素晴らしいのは、彼が自分のためだけにそうしてたんじゃないってことだ。彼はいつも他のミュージシャンのマスター・テープや版権などについて気にかけていた。彼はアーティストに自分の権利がどういうものか理解して欲しかったんだ。彼は、そうしたことすべてにおいてその時代より先にいた。俺には多くの、年上の伝説的ミュージシャンの友人がいる。彼らの問題だから名前は伏せるけど、彼らの曲はいろんなところで演奏されているにもかかわらず、彼らにはお金が入ってこない。著作権がないんだ。版権もない。自分が作詞作曲した曲の権利を他人が握っている例はとても多い。ひどい話さ。プリンスはこれに反対だった。

Translation by Kise Imai

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