プリンス、知られざる慈善家としての一面とは

Photo by Frank Micelotta/Getty Images

プリンスがいかにして都市部の若者にテクノロジーを学ばせ、環境を守り、政治家をずる賢く同席させたかを、活動家ヴァン・ジョーンズが解き明かす。




始まりは10年前に届いた1枚の匿名の小切手だった。環境問題・人権問題の活動家、ヴァン・ジョーンズがジョージ・W・ブッシュのグリーン・ジョブ法(環境関連雇用創出法)の仕事をしていた時、彼のもとに振出人不明の5万ドルの寄付金が届いた。「私はすぐに返却した」とジョーンズは振り返っている。「5万ドルもの匿名の小切手を受け取るわけにいかない。誰がどんな意図で送ってきているか、分からないからだ」。その後返却した小切手がまた届けられたので、彼はもう一度返却した。

やがて、寄贈者の代理人と称する人物からジョーンズあてに電話があった。「寄贈者の名前を明かすことはできませんが、その方の大好きな色は紫色です」。ジョーンズは苦笑する。「だから私はこう返事をしたんだ。"それはそれで問題です。だってそんな小切手は現金化できません。額縁に飾らないといけませんから"」。その話を気に入った寄贈者のプリンスが、ジョーンズに直接電話をかけたことから、彼らは親しくなった。

この時ジョーンズは、フィランソロピスト(慈善家)であるという、プリンスの秘密の一面を知ったのだった。現地時間4月21日のプリンスの死去以来、ジョーンズはプリンスがどれほど慈善活動に打ち込んでいたのかを知ることとなった。近年のプリンスは、貧困地域でのグリーン・ジョブ創出を支援する『Green for All』、都市部の若年層にテクノロジー教育を行う団体『#YesWeCode』でジョーンズに協力したほかにも、黒人に対する暴力に反対する『Black Lives Matter』といった社会運動の認知向上に努めたり、トレイヴォン・マーティンの家族に寄付をするといった活動をしてきた。プリンスの元妻であるマニュエラ・テストリーニがプリンスと出会ったのは、彼の財団の慈善活動を通じてのことだったし、自分の慈善活動を始めなさいと促したのも彼だった。彼女は、自身の団体『In a Perfect World』で取り組んでいる学校建設を彼に献げるとしている。プリンスの死後に発表された声明の中で、彼女は彼のことを"激烈な慈善家"だったと呼んでいる。

プリンスは、有色人種の若者がオークランドで太陽光パネルを設置しているというニュースを見て、どうにか支援したいと考え、ジョーンズのグリーン・ジョブの取り組みに関心を持つようになった。「私がインナーシティ(都心近接低開発地域)支援に乗り出しているところを気に入ってくれた」とジョーンズはローリングストーン誌に語っている。「プリンスは、これこそ雇用創出の素晴らしい解決策だと考えたんだ。彼は常に、経済的な自立を支援していた」

Translation by Kuniaki Takahashi

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE