プリンス、80年代以降の隠れた名曲15選

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1990年代と2000年代の、最も正当に評価されるべきプリンスの曲を一挙公開!





申し分のない1年を過ごせるアーティストはほとんどいないが、プリンスは1980年代、ほぼ完璧な10年を過ごした。ファンキー・ニュー・ウェーヴの最高傑作、『ダーティ・マインド』を1980年にリリースしてから1988年の見事に凝縮されたアルバム『LOVE SEXY』まで、プリンス・ロジャー・ネルソンは、それまでほとんど類を見ない音楽的革新とポップ・カルチャーの融合を実現させた。

それ以降のプリンスは衰えたわけではないが、"紫の殿下"が毎回優れたライヴパフォーマンスに没頭すればするほど、ヒット曲の"打率"は変わっていった。1998年にリリースされた4枚組のコレクション、『CRYSTAL BALL』や1994年の『COME』もそうだが、名作は希少なアルバムか、そうでなければ分かりにくいアルバムの中に隠れている。プリンスのポスト80年代のアルバムは、たとえそれがあまりにも残念な、手ぬるい出来だったとしても、1曲か2曲は最高傑作と呼べる曲が収められている。





『Lavaux』

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アルバム『20TEN』(2010)より


このセクシーな、シンセサイザーで彩られたポップ・ソングは、プリンスの35枚目のスタジオ・アルバム(ヨーロッパの雑誌や新聞の付録としてリリースされた)に収録されている。ニューヨーク市とポルトガルの名前が曲中で挙げられているが、この陽気な曲が賛美しているのは、雪をかぶった山々やブドウ畑だ。そしてタイトルはその内容にふさわしく、プリンスが2007年と2009年にモントルー・ジャズ・フェスティバルで訪れたスイスの地名だ。ユネスコの世界遺産に登録されているラヴォー地区のブドウ畑は、レマン湖岸沿いに約20マイルも続いている。『エーデルワイス』以降、スイスについて書かれた最もファンキーな曲は、間違いなく『Lavaux』だ。





『Sticky Like Glue』

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アルバム『20テン』(2010)より
ファルセットのささやき声、ギターの速弾き――『Sticky Like Glue』は、1970年代後半の『ソフト・アンド・ウェット』などの名作に代表される、プリンスが草分けとなったライト・ゲージファンクと同じタイプの曲だ。3人のコーラス(シェルビー・J、リヴ・ワーフィールド、エリサ・ディーズ)と交互に歌い、ギター演奏は、ナイル・ロジャースのような勢いのあるアップ・ストロークだ。1990年代前半の信念を再び受け入れたプリンスの他の多くの曲のように、『Sticky Like Glue』も、潜在的に挑発的な歌詞をPG13程度に再構成し、セックスだけでなく友情の喜びをもたたえている。





『Somewhere Here On Earth』

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アルバム『プラネット・アース~地球の神秘~』(2007)より


プリンスは曲にノスタルジーを投影させることはないが、この優しいピアノのバラード曲は、温かみのあるレコードの音割れと共に始まる。プリンスのシルクのような滑らかなファルセットは次第にジミー・スコットの領域に入り、デジタル時代を嘆き、人と直接向き合う関係の方がいいと主張している。トランペット奏者のクリスチャン・スコットが弱音器を付けて演奏し、ピアニストのレナート・ネトが伴奏した。スコットのトランペットはマイルス・デイヴィスの全盛期のように心を揺さぶるものだった。プリンスがジャズ寄りに方向転換する時、ロック調のフュージョンにしてしまう傾向があるが、今回は上手くアプローチし、程良くシンプルに、かつクラシックに仕上げた。


Translation by Cho Satoko

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