プリンスの初主演映画『パープル・レイン』はなぜ傑作なのか

紫の殿下:1984年のプリンスの映画『パープル・レイン』サウンドトラックのジャケット。この映画とサウンドトラックのヒットにより、プリンスはポップ・カルチャーのメインストリームになった。

プリンスはいかにして自伝的映画をロック映画史上屈指の不朽の名作たらしめたか。

2014年、映画『パープル・レイン』の公開と同作のサウンドトラックのリリース30周年に先駆け、ワーナー・ブラザーズはプリンスと「新しいパートナーシップ」を結んだと発表した。これは、全アルバムのマスターテープの所有権をワーナーがプリンスに返還する見返りとして、彼のリマスターおよび未発表音源をワーナーからリリースすることを約束するものだった。おおむね、この発表により、90年代に彼がレーベルを相手に起こした戦いは、友好的かつ幸せな結末を迎えたかのように思われた。あの頃は、ミュージシャンの権利のために彼は正当に戦っていると考える者もいれば、顔に"SLAVE"(奴隷)とペイントしたり、名前を発音できないよう記号に変えたりするなど、どんどんエスカレートする奇行をただ楽しむ者もいた。しかし、ファンにとって、その戦いは違う意味を持っていた。近いうちに、私たちはブートレグを放り出すことができるかもしれない。公式の、高音質バージョンの『ファザーズ・ソング』や、公式にリリースされたことのなかった、何百とはいかないまでも、何十曲もの80年代の曲と引き換えに。

『パープル・レイン』のセッションは、それだけで伝説だ。後年、アルバート・マグノーリ監督がほとんどの曲は基本的にデモだったと明らかにしているが、プリンスは自身の大ヒット映画で使用するために100曲近く作曲したと言われている。しかし、『ファザーズ・ソング』は、"ザ・キッド"と父親が静かで物悲しい会話を交わすシーンで実際に使われ、長い間、プリンス・ロジャース・ネルソンという男と偶像化されたパフォーマーとの間にある真実を明らかにする合鍵のように思われてきた。今、彼の死はその鍵穴を覆い隠した。多くのリスナーに、映画だけを彼の特異なアイデンティティを描いた伝記、解説、あるいはカプセルとして残したまま。

Translation by Naoko Nozawa

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