プリンスのペイズリー・パーク訪問記:紫の殿下との魅惑の一日

スタジオの屋内は、想像に近いものだった。特注のベルベットの家具。クッションの上につけられたハート形と、壁にかけられた例の男女のシンボルが思い出される。音楽賞のショーのビデオ・カセットが並べられ、カゴの中に2羽の鳩もいた。

彼をコンサートなどで間近に見ることは何度もあったが、彼と向き合ったらどのような感じなのか強い興味があった。そんなことに思いを巡らせていると、プリンスが戸口に現れた。彼は、プリンスそのものだった。メイクをして、ハイヒールを履き、黒いフェルト製のチュニック風の上着を着ていた(この上着から縫い糸がだらりと垂れ下がっているのを見て驚いた覚えがある。それ以外はスキのない完璧な男だったが)。彼は簡単に自己紹介を済ませると、ミーティング・ルームに向かって歩き始めた。ジャーナリスト1人とカメラマン1人が、私より先に話すことになっていたので、彼らが今日のプリンスの機嫌についてあらかじめ教えてくれることを期待していた。

それがわかるのに長く待つことはなかった。カメラマンは、そそるタイプの女性だったが、5分後には帰る羽目になっていた。泣きながらミーティングを離れていった。ミーティングの前に、彼女は私に作品集を見せてくれていた。多くのショットで彼女はヌードだった。それが彼女の仕事だった。彼女は、プリンスの横で自分のヌードを写したかったのだが(おそらく後の画像処理によるやり方だろう)、プリンスは拒否したのだ。

次はエンターテインメント・ウィークリー誌の記者だった。彼女は25分間頑張った。プリンスのパブリシティ担当者から聞いた話だが、「紫の殿下」は彼女もお気に召さなかったようだ。彼女はプリンスにうわべだけの有名人向けの質問を山のように尋ねたようだ。例えば、「映画に行ったりするの?みんなあなたに気づくんじゃない?」とか。私の番はこの次で、今日のラストのジャーナリストだった。私はこれ以上彼の気分を壊さないよう祈った。

ミネソタ州チャナッセンにあるプリンスのペイズリー・パーク・スタジオ、1988年撮影(Photo by Jim Steinfeldt/Michael Ochs Archives/Getty Images)

プリンスはどのインタビューも録音を許さなかった。バッグの中に録音機材を忍ばせておくような真似をしないよう、私は黄色のリーガル・ノートとペンだけを渡された。私たちは大きなミーティング・ルームにいた。その部屋にはプリンスと、プリンスの音楽的、精神的なメンターであるグラハム・セントラル・ステーションのファンク・ベーシスト、ラリー・グラハムと、プリンスの広報担当者のロイスがいた。

Translation by Kise Imai

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