唯一無二の"プリンス"として生き抜いた57年間とは

2000年代、プリンスは様々な可能性を模索し続ける。2000年に名義を正式にプリンスに戻した彼は、翌年にジャズテイストが強く賛否両論を呼んだ『ザ・レインボウ・チルドレン』を発表する。また同年に、ジョニ・ミッチェルのカヴァー「ア・ケイス・オブ・ユー」を含む、プリンスによるピアノ弾き語りが中心のアルバム『ワン・ナイト・アローン…』を、オンライン限定でリリースしている。2002年には初のライブアルバム『ワン・ナイト・アローン…ライブ!』を発表するが、同名のスタジオアルバムと同様にチャートインを逃した。また2003年にはジャジーなインストアルバム『エクスペクテーション』『N・E・W・S』、そしてファンク・ジャズ路線の『Cノート』の3作品をリリースしている。



2004年発表の『ミュージコロジー』で、プリンスはメインストリームの最前線に復帰する。同作に収録された「コール・マイ・ネーム」はグラミー賞の最優秀男性R&Bヴォーカル・パフォーマンス賞、表題曲は最優秀トラディショナルR&Bヴォーカル・パフォーマンス賞をそれぞれ受賞した。コンサートのチケット付きCDという試みが功を奏したこともあり、アルバムはチャートの第3位を記録し、ダブル・プラチナ・ディスクに認定された。(同作の発売後、ニールセン・サウンドスキャン社はコンサートチケットに付属するCDをアルバムセールスとしてカウントしない方針を発表した)同年にはファンキーなR&B路線の『ザ・チョコレート・インベージョン』と『ザ・スローターハウス』も発表されているが、どちらもチャートインを逃している。



当時急速に普及し始めていたYouTubeをはじめとするストリーミングサービスに対し、プリンスは徹底して否定的な姿勢を示した。そういった状況にも関わらず、ファンク色の強い2006年作『3121』は初登場第1位を記録し、ゴールド・ディスクに認定された。2007年作『プラネット・アース〜地球の神秘〜』は第3位にランクインし、同作に収録された「フューチャー・ベイビー・ママ」はグラミー賞を受賞した。その後大型スーパーマーケットのTarget限定で発売された2枚のアルバム『ロータス・フラワー』『MPLサウンド』(ブリア・ヴァレンテの『エリクサー』も同梱)はチャートの第2位にランクインし、ゴールド・ディスクに認定された。

アルバムのリリース形態における実験的試みは、2010年代に入ってからも続いた。2010年作『20テン』は、ローリングストーン誌ドイツ版をはじめとした、複数の出版物のノベルティとして配布されている。2014年には、プリンス&サードアイガールとしてロックとファンク色の強い『プレクトラムエレクトラム』を発表したほか、ソロ名義ではR&B路線の『アート・オフィシャル・エイジ』をリリースし、どちらもトップ10入りを果たした。昨年には『ヒット・アンド・ラン・フェーズ・ワン』『ヒット・アンド・ラン・フェーズ・トゥー』の2作を発表。楽曲のストリーミング使用を一貫して拒否し続けたプリンスだが、後者はジェイ・Zが運営するストリーミングサービス、タイダルでの限定リリースとなった。



インタビューを嫌ったプリンスは私生活についても多くを語らなかったが、キム・ベイシンガー、マドンナ、シーラ・E、カルメン・エレクトラ、スザンナ・ホフ等、彼と恋人関係にあったとされる女性は数多い。1985年にはザ・ファミリーのフロントウーマンであり、ザ・レボリューションのギタリストのウェンディ・メルヴォインの双子の妹でもあったスザンナ・メルヴォインと婚約したが、結婚には至らなかった。1996年にダンサーのマイテ・ガルシアと結婚し、ほどなくして息子のボーイ・グレゴリーが生まれるが、誕生から1週間後にファイファー症候群によって命を落としている。2人は1999年に離婚し、プリンスは2001年にマニュエラ・テストリーニと再婚。また同年、彼はエホバの証人に入会したことを公表している。マニュエラとの結婚生活は長続きせず、2人は2006年に離婚している。

今年に入り、プリンスは自伝を制作中だと明かしていた。「物心がついたばかりの頃の記憶からスーパーボウルでのショーに至るまで、あらゆることを網羅するつもりだ」先月ニューヨークで開催されたプライベートコンサートで、彼はファンを前にそう語っていた。「まだ着手したばかりだけど、できるだけ早く完成させたいと思ってる」自伝の仮タイトルは『ザ・ビューティフル・ワンズ』だとされていた。

※関連記事:プリンス、未発表独占インタヴュー:「死はこの世を去るって意味じゃないと思ってる」

Translation by Masaaki Yoshida

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