2016年『ロックの殿堂』セレモニー総括:N.W.A.、チープ・トリック・ディープ・パープルが受賞



次にアルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』でスティーヴ・ミラー・バンドの曲を何度もサンプリングしたN.W.A.が紹介されたのは、当然の流れだった。プレゼンターを務めたケンドリック・ラマーは、「有名なグループが俺たちみたいな見た目で、俺たちみたいな格好をして、俺たちみたいな喋り方をするのは、スラム街の子供たちみんなに成功できること、そして挑戦することが大切だってことを証明しているんだ」とスピーチした。「N.W.A.こそ、そういうグループで、それが彼らの真なるメッセージなんだ」

理由は明らかになっていないが、N.W.A.はパフォーマンスしない選択をした。とびきりのセットの実現を可能にしてくれたであろう、ザ・ルーツが会場にいたにもかかわらずだ。パフォーマンスこそなかったが、メンバーはこの夜一番のスピーチをしてくれた。一番手のドクター・ドレーは「(グループを始めた時)たくさんの人が俺たちのことを批判してた。俺たちが言ってることが原因だったんだろうな」と話し、さらに「分かる。理解してるさ。ヤツらは俺たちを受け入れる準備ができてなかったんだ。グループ名からして衝撃的だもんな。モノをいうニガーたち(Niggaz with Attitudes)だぜ?分かるか?」と続けた。

そして次にマイクの前に立ったMCレンは、ローリングストーン誌にラップの終わりを楽しみにしていると話していたジーン・シモンズに反論してみせた。「それから俺は、ミスター・ジーン・シモンズに言いたい。ヒップホップは永遠だ!」MCレンはこう言うと、さらにジーンに「慣れろ!慣れてくれよ!」とメッセージを送った。アイス・キューブもまた、ヒップホップ・アーティストのロックの殿堂入りを反対してきた多くの人に向けて「俺たちがロックン・ロールかどうかって?答えはもちろんイエスだ。」と話し、次のように続けた。「ロックン・ロールは楽器でもなければ音楽のジャンルでもない。ロックン・ロールはスピリットなんだ。ブルース、ジャズ、ビバップ、ソウル、R&B、ヘヴィメタル、パンク・ロック、そしてヒップホップに受け継がれてるもの。すべてはスピリットで結びついているんだ。そのスピリットのもとでは、ジャンル分けなんて無意味なんだよ。」



この後に続いた追悼コーナーでは、2015年の式典から数多くの才能がこの世を去っただけあり、膨大な人数の音楽関係者がスクリーンに映し出された。式典の2日前に亡くなったマール・ハガードの名前も見ることができた。そして最後にデヴィッド・ボウイの名前と写真が映し出されると、会場は大きな拍手と歓声で包まれていた。またこの映像の前には、シェリル・クロウとグレイス・ポッターがカントリー風にアレンジした『ニュー・キッド・イン・タウン』をグレン・フライに捧げる、感動的な時間があった。




追悼コーナーが終わると今度は、マッチボックス・トゥエンティーのロブ・トーマスがステージに上がり、シカゴの功績を紹介した。スピーチの中でロブは、シカゴが長年に渡って不当な中傷を受け、相手にされずにいたことに対して熱く非難した。「シカゴはいろいろなことを言われてきました」ロブはこう切り出すと、「"たちの悪い男"は彼らのことじゃないことを、僕は知っています。今から言うことを覚えておいてください。ジミ・ヘンドリックスが彼らに初めて会った時に、バンドのホーン・セクションは、まるで一人のプレイヤーが担当してるようなサウンドで、ギタリストのテリー(・キャス)は自分より上だと言ったのです。スゴイことでしょ。もしシカゴは母親世代のバンドだって言うなら、僕はあなたの母親と一緒にパーティをしたいと思います」

Translation by Miori Aien

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