ボブ・ディランの1980年代人気ソング・ベスト10

Photo by Keith Baugh/Redferns



第8位:『ダーク・アイズ(Dark Eyes)』


1985年前半、『エンパイア・バーレスク』の収録を終えようとしていたディランに、プロデューサーのアーサー・ベイカーはある申し出をした。なめらかでモダンに仕上がりつつあったアルバムの締めに、シンプルなアコースティック曲の挿入を提案したのだ。ディランに曲のアイデアは全くなかったが、ある日の夜遅く、ニューヨークのプラザ・ホテルのロビーで売春婦を見かけたことで、構想が浮かんだ。「彼女の目の周りには真っ青なあざができていた。黒いアイライナーが引かれ、黒い瞳をしていた」ディランは、2004年に執筆した自伝『クロニクルズ』にこう書いている。「彼女は殴られていたようだった。そして、またやられるのを恐れている様子だった」この悲しい姿に触発されて、ディランはプラザ・ホテルの部屋からセントラル・パークを見下ろしながら『ダーク・アイズ』を書いた。それから10年後、パティ・スミスからのリクエストで、ディランは初めてこの曲をステージで歌った。ディランはパティに、自身の全作品の中から2人のデュエット用に好きな曲を選ぶように言った。



第7位:『エヴリシング・イズ・ブロークン(Everything Is Broken)』


1989年の時点で、ディランはこの先二度と名盤を出すことはないように思われていた。トム・ペティやグレイトフル・デッドとの一連のツアーは楽しいものではあったが、直近の3枚のアルバムは相当期待外れだった。さらに悪いことに、時としてディランは努力さえも放棄している様子だった。ディランは、『クロニクルズ』にこう書いている。「創造性を刺激されることがなくなっていた。潜在的にあったものは全て消え去り、小さく縮んでしまった」転機は、ボノからダニエル・ラノワとの制作を提案された時だった。ディランは、『オー・マーシー』のプロデューサーとなったラノワと仕事をするため、ニューオーリンズに向かった。この時書いたディランの新作の一つ、『エヴリシング・イズ・ブロークン』に、当時のディランの心情がはっきりと描かれている。特に、手に重傷を負い、長期間ギターを演奏できなかった時の状況が分かる。いささか皮肉なことに、どん底の精神状態を歌った曲は、ディランの低迷どころか変わらぬ偉大さを示す一つのサインとなった。

Translation by Satoko Cho

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