ボブ・ディラン、1970年代以降の名曲ベスト10

第3位:『嵐からの隠れ場所(Shelter From the Storm)』


『血の轍』には、理想的な関係が完全に崩壊したことを振り返る曲が多数収録されている。滅多にないことだが、この曲でディランは自らの非を進んで認めている。ディランはこう歌った。「今、僕らの間には壁がある。何かが失われた。僕は当たり前だと思い過ぎていた。何も分かっていなかった」しかし、いつも通りディランは元に戻ろうとすることはなく、彼女はただの良い思い出として描かれている。映画『ザ・エージェント』のサウンドトラックには、この曲の別バージョンが収録されている。『血の轍』のブートレッグ・シリーズが作られるようなことがあれば、このような曲はもっとたくさん聴けるだろう。



第2位:『ハリケーン(Hurricane)』


ルービン・"ハリケーン"・カーターの裁判と投獄に関する複雑な歴史を学びたければ、ディランの1975年の曲よりずっと良い資料がある。1966年、カーターは3人を殺害したとして逮捕され、本人の主張に反して投獄された。ディランが劇作家のジャック・レヴィと共作したこの歌は、明らかにカーター擁護を目的としている。事件の鍵となる詳細は省略され、ストーリーはカーターが聖人君子であるかのように整えられている。彼の無実はほぼ間違いないが、事実はこれよりはるかに複雑だ。しかし、そんなことはあまり重要ではない。『ハリケーン』は最高にパワフルな曲だ。その後10年かかったが、カーターはついに自由の身となった。



第1位:『ブルーにこんがらがって(Tangled Up in Blue)



1975年1月に『血の轍』がリリースされたことが、どんなに感動的なことだったか、今の人には伝わりづらいかもしれない。ディランは6年という長い間、完璧な傑作と呼べるようなアルバムを出していなかった。また、ディランのバックバンドだったザ・バンドとの前年のツアーでは、昔のヒット曲を夢遊病者のようにこなすディランの姿があった。しかし、一度レコードプレイヤーの針がこのアルバムに落とされ、『ブルーにこんがらがって』がかかった瞬間、『ブロンド・オン・ブロンド』や『追憶のハイウェイ61』を世に出した天才が消えてないことは証明された。

この曲は、時空を越えて旅する薄幸の恋人たちの物語だ。歌詞に満足しなかったディランは、1984年のヨーロッパツアーのために歌詞を大幅に改訂した。アルバム自体は微妙だが、ライヴ・アルバム『リアル・ライブ』で改訂版を聴くことができる。

Translation by Satoko Cho

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE