エマーソン・レイク・アンド・パーマーの名曲10選

Photo by Michael Putland/Getty Images


『スティル、ユー・ターン・ミー・オン/Still… You Turn Me On 』(1973)

「ロックの技術はまだそんなに進んじゃいない」73年、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで、エマーソンはこう嘆いた。エマーソンをはじめとするメンバーは、ELPのさらなる進化に繋がる新たなイノヴェーションを常に模索していた。そんなテクノロジー主導で有名な彼らだが、4枚目のアルバム『恐怖の頭脳改革』の『スティル、ユー・ターン・ミー・オン』は、これまでと少し作風が異なる。あくまでも相対的に言えばの話だが、レイクが作ったこの楽曲は、技術を駆使する代わりに、甘い旋律とエマーソンが奏でる上品で華麗なシンセサイザーのサウンドを重んじている。とは言え、この曲ではファンクという新しい要素をふんだんに取り入れているので、ELPにとってはこれもイノヴェーションと呼べるのかもしれない。『スティル、ユー・ターン・ミー・オン』が時代を超えた作品に仕上がっているのは、レイクの曲作りとエマーソンが生み出す雰囲気のバランスに負うところが大きい。次世代のサウンドに夢中いなっている時でさえ、優れた曲はいつも彼らの芸術の中心にあることを、ELPは知っていたのだ。

『悪の教典#9/Karn Evil 9』(1973)


プログレッシヴ・ロックの象徴的な作品である『悪の教典#9』は、このスタイルが支持される、または非難される全てを体現している。3つの"印象"から構成される、この驚くほど複雑で大掛かりな楽曲は、73年のアルバム『恐怖の頭脳改革』の中心的な作品で、人間対テクノロジーという重いテーマを探求する一方、メンバーが高度な演奏技術を披露する機会を与えている。バンドを批判する人々にとっては、まさに"終わりのない演奏"であるが、30分近いディストピア・ファンタジーは、今になってみると、先見の明があるようにも感じる。「コンピューター・テクノロジーは始まったばかりだったけど、その技術を取り入れたことで、すでに非難を浴びていたよ。ステージで演奏しているのは俺たちじゃないと考える人がいたくらいさ」2000年、キース・エマーソンは当時を振り返った。「ライブが終わってステージを去る時、俺はモーグを観衆に向けて派手な音を立てたものだったよ。これからはコンピューター・テクノロジーの時代だと言わんばかりにな」

『庶民のファンファーレ/Fanfare for the Common Man』(1977)


メンバーのソロが中心の2枚組アルバム『ELP四部作』の中で、トリオが揃って演奏するD面の1曲目に収録されている『庶民のファンファーレ』。キース・エマーソンが"アメリカン・ミュージックそのもの"と称えるアーロン・コープランドが42年に書いた楽曲をアレンジしたものだ。エマーソンはコープランドの楽譜をEのキーに転調し、メンバーはファンファーレの旋律をシンプルに演奏した。そして曲の合間にブルース・シャッフルを入れた見事なファースト・テイクをレコーディングした。これに対しコープランドは、「彼らの曲の合間の演奏が、私の音楽とどう繋がるのかよくわからないが(笑)、まあどうにかやるんだろうよ」と述べた。コープランドの承認を得た約10分という長さの『庶民のファンファーレ』は、テレビ放送されるさまざまなスポーツ・イベントで、勝利を象徴する馴染みの曲となった。

Translation by Aki Urushihara

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