エマーソン・レイク・アンド・パーマーの名曲10選

Photo by Michael Putland/Getty Images


『ホウダウン/Hoedown』(1972)


ELPに負けず劣らず自己顕示が強い作曲家、アーロン・コープランド。トリオが初めて彼の曲をカヴァーしたのが、この『ホウダウン』だ。ショー・ストッパー(拍手喝采でショーが一時中断されるほどの演奏)として有名だが、いくつかのツアーではショー・スターターとして起用されたこともあったという。キース・エマーソンはルーマニアで開催されたクラシック・フェスティバルから帰ってくると、すぐこの作品に取り掛かった。そのためか、『ショートニン・ブレッド』や『藁の中の七面鳥』といったアメリカン・フォークに近いロック・オルガンとモーグのアレンジに、東ヨーロッパ的な要素が入り込んでいる。エマーソンは、この曲の特徴ともいうべきシンセサイザーのサウンドを偶然見つけたという。「俺たちがこのアレンジに取り組んでいる最中にふと思いついたんだ。自分でもわかなないまま、ブルーのボタンを入れて、パッチコードを挿してみると、やったぜ!という感じの音に出会えたんだ」

『トリロジー/Trilogy』(1972)


ELPのサード・アルバムの中で最も長く、大掛かりな楽曲『トリロジー』は、エマーソンの軽快なピアノの旋律で幕を開ける。エマーソンとグレッグ・レイクの共作であるこの曲は、彼らにそぐわない抑制を効かせた、独創性に乏しく単純で生気のないラブ・バラードのようだ。だがこれは斬新なリブとバロック風のシンセサイザーが何層にも重なる複雑な構成を支配するまでの序奏に過ぎない。『トリロジー』を発売した72年、エマーソンはディスク誌にこう語った。「俺はあらゆる要素を自分の音楽に取り入れようとしているんだ。だから、もう少し時が過ぎてから、いろいろと分かることもあるだろう。リスナーが曲を聴くたびに、何か新しい発見があるというは、音楽の素晴らしさの1つだと思うんだ」

『トッカータ/Toccata』(1973)


ELPのクラシック音楽への情熱と、最先端の音楽技術に対する強い関心を組み合わせた結果、キース・エマーソンの、大胆で遊び心に満ちたアルベルト・ヒナステラのピアノ協奏曲第1番、第4楽章のアレンジが出来上がった。また、予めプログラムされた電子ドラムをフィーチャーした商業レコーディングは、この曲が初めてだといわれる。73年のアルバム『恐怖の頭脳改革』にこの楽曲を収録する際、ELPはヒナステラの出版社から抵抗を受けた。そこでエマーソンは、スイスにあるヒナステラの自宅まで赴き、直々に使用許可を願い出た。「アルベルトと彼の奥さんと一緒に昼食を取った後、テープを聴かせたんだ」14年、エマーソンは当時を振り返った。「曲が終わると、アルベルトは妙な表情を浮かべているんだよ、痛みに顔をゆがめるみたいに。そこで彼が何か言ったんだ、正確な言葉は思い出せないけど、"これはひどい!"みたいな感じさ。"くそっ! 失敗した"と俺は思ったね。それでそのまま帰ろうとしたんだ。すると奥さんが、"勘違いしないで、彼は良い意味で”恐ろしい"と言ったの。"信じられないほど素晴らしいってことよ"」こうしてヒナステラの支持を得て、アルバムの解説文には"キース・エマーソンは原曲の精神を見事に捉えている"と彼の言葉が掲載されることになった。

Translation by Aki Urushihara

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