ジェフ・バックリィ、秘蔵音源アルバム発売の全貌に迫る

『ユー・アンド・アイ』の収録曲はバラエティに富んでいる。自身のパーソナルな部分を投影したスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『エヴリデイ・ピープル』、レッド・ツェッペリンの『ナイト・フライト』、ザ・スミスの『心に茨を持つ少年』『アイ・ノウ・イッツ・オーヴァー』、R&Bバラード『ドント・レット・ザ・サン・キャッチ・ユー・クライン』(初録音は1946年、ルイ・ジョーダン・アンド・ヒス・ティンパシー・ファイヴによる)デルタ・ブルースマンのブッカ・ホワイトの『プア・ボーイ・ロング・ウェイズ・フロム・ホーム』といったカヴァー曲のほか、バックリィの代表曲である『グレース』『ドリーム・オブ・ユー・アンド・アイ』のデモ・ヴァージョン、そして1998年発表の『スケッチズ(フォー・マイ・スウィートハート・ザ・ドランク)』に収録された『ユー・アンド・アイ』の妖艶なラフ・ヴァージョンも収録されている。

今も名作として語り継がれる1994年発表の『グレース』を残し、97年にミシシッピ川で溺死したバックリィのファンにとって、すべての未発表曲はかけがえのない宝物だ。彼のよりパーソナルでリアルな部分が描かれているという点においても、『ユー・アンド・アイ』は非常に興味深い内容となっている。

「ジェフがコロムビアに作品を残した数年間は、4つのフェーズに分けられる」ベルコウィッツはそう話す。「チャプター2〜4は既に知られているとおりだ。『ライヴ・アット・Sin-é』(1993年11月発表の4曲入りEP)、『グレース』、そして『スケッチズ(フォー・マイ・スウィートハート・ザ・ドランク)』がそうだ。そういう意味で、この作品は彼のチャプタ−1にあたるんだ』

『ユー・アンド・アイ』に収録されている10曲は、すべて2トラックのDATでの1発録りとなっており、ミックス等のポストプロダクション作業は一切施されていない。それが故に、バックリィの稀有な才能とシンガーとしての魅力がより生々しく描かれている。「ミックス、編集、オーバーダブ、そういった一切のポストプロダクション作業が排除されているんだ」当日のセッションでエンジニアを担当したシェルター・アイランドのオーナー、スティーヴ・アダボはそう語る。「23年前にジェフがヘッドフォンを通して聴いていた音、そしてベルコウィッツと私がコントロールルームのスピーカーから耳にした音、それがこの作品になっているんだ」




「23年前にジェフがヘッドフォンを通して聴いていた音、そしてベルコウィッツと私がコントロールルームのスピーカーから耳にした音、それがこの作品になっている」ー スティーヴ・アダボ Photo by Michel Linssen/Redferns

Translation by Masaaki Yoshida

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