ジェフ・バックリィ、秘蔵音源アルバム発売の全貌に迫る

David Gahr

「彼はまだ本当のジェフ・バックリィを見つけ出していなかった」新たにリリースされる1993年の秘蔵音源についてA&Rが語る

ジェフ・バックリィを知る人物たちが語る、新たにリリースされるコロムビア時代の初期音源『ユー・アンド・アイ』の魅力とは

1993年2月、史上最高のシンガーのひとりと言われるジェフ・バックリィは、わずかな楽器と手書きの曲リストを手に持ち、ニューヨークのチェルシーにあるシェルター・アイランド・スタジオを訪れた。

当時26歳のバックリィは数ヶ月前にコロムビア・レコードと契約を交わしたばかりだったが、同スタジオを訪れた目的はアルバムのレコーディングでもデモ曲の制作でもなかった。当時バックリィのライブにおけるレパートリーは、ポップスのスタンダードからクラシック・ロック、デルタ・ブルース、果てはスーフィー教の祈祷曲までと多岐にわたっていたが、それは自身の音楽性を確立できていないことの裏返しでもあった。自身の進むべき方向を見出すこと、それが彼がシェルター・アイランドで過ごした3日間における最大の目的だった。

「当時はニルヴァーナを筆頭にした、グランジブームの真っただ中だった」バックリィの母親、メアリー・ギバートはそう話す。「そんな時代に、ジェフはロバート・ジョンソンやエディット・ピアフを歌ってた。その実力をレコード会社の重役たちに見せつけるための曲を見つけようと、私たちは彼にスタジオ入りさせたの」

「その歌声を聴いた時、彼が音楽史における先人たちの系譜にある天性のシンガーだと確信したんだ」コロムビアでバックリィのA&Rを務めたスティーヴ・ベルコウィッツはそう話す。「しかし、彼はまだ本当のジェフ・バックリィを見つけ出せずにいて、どういったレコードを作ればいいのかわかっていなかった。才能に恵まれすぎていたがゆえに、進むべき方向を決められずにいたんだ。それを見つけ出すために、我々は彼にスタジオ入りを促した。『君のレパートリー、あるいはそれに加えようと考えている曲をレコーディングしてみよう』ってね。その中から1曲だけでも、アルバムのコンセプトにつながるものが生まれることを期待していたんだ」

3月11日にソニーよりリリースされた、ギバートが監修を務めたバックリィの未発表曲集『ユー・アンド・アイ』には、シェルター・アイランドで・セッションでレコーディングされた9曲が収録されている。(同年後半にニューヨーク州ウッドストックのベアーズヴィル・スタジオでレコーディングされた、ボブ・ディランのカヴァー『女の如く』も収録)ソニー・ミュージックのアーカイヴから発掘されたこれらの未発表曲は、20世紀のポップスの歴史に対する彼の造詣の深さだけでなく、彼がシンガーとしてだけでなくギタリストとしても優れていたことを示している。

Translation by Masaaki Yoshida

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