その年の9月にビートルズは『ラヴ・ミー・ドゥ』をシングル発売したのだが、実はマーティンはこの曲を録音させるつもりすらなかった。当時の慣例で、マーティンがビートルズ用に選んだ曲があったのだ。プロのソングライターによる手だれの作品、『恋のテクニック(ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット?)』だ。ビートルズは、まだ最初の録音で立場も弱かったにもかかわらず、自分たちのオリジナル曲に頑固にこだわった。『恋のテクニック』の演奏を強いられると、わざと曲の陳腐さを目立たせるように演奏して、リリースできないように妨害工作をするのであった。(後にこの曲は、"ブリティッシュ・インヴェージョン"の典型バンド、ジェリー&ザ・ペースメイカーズによってヒットする)
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