ジェフ・ベックが語る、ジョージ・マーティンとの思い出:「彼が僕にキャリアを与えてくれたんだ」


74年のジェフは、プロそしてアーティストとして岐路に立たされていた。エネルギッシュなバンド、ベック・ボガート&アピスは解散し、次のバンドにボーカルが必要か決めれずにいたのだ。「ロッド・スチュワート級のヤツは、他に地球上にいなくてさ」と彼はかつてのジェフ・ベック・グループのフロントマンの名前を挙げた。また当時、ヴォーカルではなくギターを見せつけるためにアルバム制作話を持ちかけることは、冒険的なことだった。そんな状況の中、ジェフは「土壇場の試み」として、マネージャーにマーティンとコンタクトを取らせたという。「彼は忙しすぎると思ってた」と話すジェフの予想に反して、マーティンは彼と会うことを承諾したのだった。『snippets of melodies』入りのデモテープを手にマーティンに会いに行ったと話すジェフは「顔を赤くして帰らないといけないって思ってたんだけど、彼は"とても面白い。レコーディングを始めよう"と言ってくれたんだ」と当時を振り返った。

イギリスの音楽業界で10年に渡って悪戦苦闘していたジェフとマーティンにとって、このコラボレーションがチームを組む初めての機会となった。ちなみにジェフの音楽活動は、初期のトライデンツ時代、その後の伝説的バンド、ヤードバーズまで遡ることができる。多くのミュージシャンと同様に、ジェフもマーティンがビートルズと出会う以前にコメディ色の濃い楽曲(例えば映画『戦場にかける橋』のピーター・クックとダドリー・ムーア他が演奏する行進曲)をプロデュースしていたことを知っていた。「俺は"ビートルズっていうのに、変な選択だな"って思ってた」こうジェフは記憶をたどった。「でもビートルズ担当のEMIは、誰かにバンドの才能を開花させてもらわなきゃいけなかったのさ。それでジョージに行きついたわけ。彼はバンドのハーモニーとその可能性を見出したのさ。『シー・ラヴズ・ユー』なんか、そうだよね。あれはジョージなしでは生まれてない曲。ジョージがメロディー部分をピッタリなコードで飾り付けてる。それから『サージェント・ペパーズ 』なんかもそうだね」

数年後、ジェフはマーティンがビートルズを指導した当時の様子を、自らの耳で確認できる機会に巡り合った。それはジェフがマーティンと会うためにスタジオに行った時のことだった。ジェフが到着したのは、マーティンが『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』のセッションのアウトテイクと音源をふるいにかけている最中だったという。「着いたらジョンの歌声が聞こえたんだ。まだ生きてるんじゃないかって思えるくらい、かなりクリアだった」とジェフ。「俺はそこに20分くらい立ったまま、ジョージがジョンにあれこれ提案してるのを聞いてたんだ。夢みたいだった」


Translation by Miori Aien

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