映画『キャロル』制作の裏にある真実の愛の物語とは

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ロマンティックで幻想的な瞬間を描いた小説に隠されたストーリーとは?原作者の葛藤や苦悩、歴史的背景にみる映画「キャロル」の制作秘話を紹介



1948年の終わり、作家パトリシア・ハイスミスは精神分析療法の費用の一部を賄うために、マンハッタンのミッドタウンにあるブルーミングデールの玩具売り場で売り子の仕事をした。彼女はこの仕事が嫌いだった(彼女は「そこで働いているときに、嬉しそうな子どもを一人も目にしなかった」と日記に書いている)。しかし金は金であり、彼女には心理療法が必要だった。少なくとも自分ではそう思っていた。彼女の婚約者で作家のマーク・ブランデルも同じ意見だった。



彼の小説『The Choice』に出てくる、フィクションのハイスミスは大きな手を持つ冷淡な女性であり、彼女の精神にとって欲望は傷のようだった。つまり彼女は女性を愛した。のちに彼女が書いたところによると、心理療法は「結婚生活に自分をなじませる」ためのものだった。




ある日1人の女性がブルーミングデールを訪れる。彼女はニュージャージーに人形を送ってくれと注文する。ミンクのコートを着た、美しい彼女は一人だった。彼女を見てハイスミスは最近激しい恋が終わったばかりの相手との酔ったような出会いを思い出した。その夜、小説『見知らぬ乗客』や『太陽がいっぱい』で知られるハイスミスは家に帰り、のちに2作目の小説『The Price of Salt』となるものの草稿を書いた。ヒロインはテレーズ・ベリベットという名の女性店員だ。彼女はキャロル・エアードという物憂げな既婚女性と恋に落ちる。その関係は危うくて張り詰めたものだった。

ハイスミスはこの作品を1952年にクレア・モーガンというペンネームで出版する。当時、この作品は100万部以上売れた。そして現在でも、2人の女性が恋に落ち、狂いも死にもせずに結末を迎えた初めての小説であると考えられている。






Translation by Yoko Nagasaka

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