マンチェスター発新人バンド「The 1975」結成秘話、彼らの音楽が共感を呼ぶ理由

The 1975は、個人的な問題から人を惹きつけるメロディを生み出す上半身裸の落ち着きのないシンガー、マット・ヒーリーのおかげで、大型新人バンドの仲間入りを果たした。(Photo by Josh Goleman)

The 1975がエモ・バンドとして結成されたのは、2000年代前半のエモ・ジャンル全盛期である。

ヒーリー、ダニエル、ギタリストのアダム・ハンそしてベーシストのロス・マクドナルドは、イングランドのチェシャーにあるヒーリーの両親が所有する小屋で放課後の時間を過ごしていた。ヒーリーの両親は英国のホームコメディ番組のスターであるティム・ヒーリーとデニース・ウェルチだ(エレクトリック・ライト・オーケストラのリーダー、ジェフ・リンは家族ぐるみの友人のひとり)。バンドはウィルムスロー高校(後にワン・ダイレクションのハリー・スタイルズも同校へ通っていた)を卒業した後も行動を共にし、マネージャーのジェイミー・オボーンがアルバム・リリースの資金を自力で調達するまでは、ドライヴ・ライク・アイ・ドゥやザ・スローダウンなどとバンド名を変えながら、何年もレーベルにアプローチをかけていた。



The 1975は、2012年からの2年間で4枚のEPをリリースし、その過程で自分たちのサウンドを徹底的に見直した。そして、へヴィなギターやスクリーモのヴォーカルの代わりに、明るいキーボードの音色やマイケル・ジャクソン風のファルセットを採用することになった。「俺たちの音楽はこの過剰で、完全に度を超えた世界について歌っている」と、ヒーリーと共に音楽の作曲とプロデュースを行うダニエルは語る。「皆が俺たちの音楽にすごく共感している。新しいエモの形だよ。俺たちはファンと極端な方法でつながりを持っている。俺たちの音楽には部族主義みたいなものがあって、ファンは俺たちを仲間のように感じているんだ」。

ヒーリーは自身の個性である奇抜さをビデオやステージで誇張し始めた。彼の言葉で言うところの「性的な理性を失った映画『シザーハンズ』のキャラ」という上半身裸でマイクを握る放蕩者に変身した。「脆さと攻撃的な自信のようなものが混ざっている。なよなよした感じもある」と彼は述べる。「自分のお尻や下腹部を回すのは完全に映画『ロッキー・ホラー・ショー』のイメージだよ」。ヒーリーは昔から挑発的な言葉遣いに長けていた。「学校での喧嘩ではよく性的な話を使ったよ。誰かが俺と喧嘩をしようとすると、男子たちを「ベイビー」と呼んで「君にフェラしたいよ」とか言った。まあ何ていうか、面食らわせてやったよ」と彼は述べる。

2013年、イングランドのノッティンガムでボデガ・ソーシャル・クラブのステージに立つThe 1975。(Photo by Ollie Millington/Getty)

The 1975は1年間で200回近くのショーを行い、バンドをツアー巡業に招いてくれたリアーナ(バンドはスケジュールが合わなかったため辞退せざるを得なかった)やヒーリーに作曲の依頼をしたワン・ダイレクションなどのファンを獲得した。テイラー・スウィフトもバンドのTシャツを着始め、彼女が何度かショーを見に来た後は、ゴシップ・サイトにスウィフトとヒーリーが交際しているという憶測まで出た。「本当に何もなかった」と彼は言う。「このことで、まだあまり覚悟ができていない世界を見せられた。起こるべき、起こるだろう出来事のひとつは、何よりもまず、自分のアルバムのことで話題にされることなんだ。誰かとデートした男としてではなくて」。

ポップ音楽界に対するヒーリーの不信感がバンドのニュー・アルバムの主要なテーマとなっている。退廃的なファンク・シングル『ラヴ・ミー』はハリウッドの偽の友情を非難した曲だ。「この曲は「仲良しグループ」的なこと全部、憧れの強い社会のヒエラルキーの上流階級について歌っている」と彼は述べる。「全体的に捏造された感があるよね。一枚の写真に写る人間になるために意欲的なんだ」。



ヒーリーは自由な性格のせいでトラブルに見舞われたことがある。2014年、彼はISISとイスラム教の教義を一括りに考えているとしてTwitter上で非難を浴びた。ひとりのファンから批判を受けけると、彼は「ハリー・スタイルズ・ファンのアカウントから「教育を受ける」のは不愉快だ」と反撃した。2015年の夏、ロサンゼルスの人気スポット、ザ・ナイス・ガイでヒーリーが酔った姿を見て、ジャスティン・ビーバーがヒーリーとは誰なのか、そして誰が彼をここに入れたのかと率直に知りたがった。「俺は「くだばれ、ジャスティン・ビーバー、このクソ野郎」みたいなことを言った」とヒーリーは振り返る。最終的に彼は外に出てファンの一行とマリファナ用キセルを吸い、ゴシップ・サイトTMZで取り上げられた。「本当にバカだった。普段は絶対にこんな状況にはならないよ」と彼は言う。

ヒーリーはホテルのバーでデザートを食べながら、チャートに載るヒット曲を見渡し、彼らがどんなに浅はかなのか指摘するなど、今日のポップスターに対して辛辣な言葉で語る。「俺たちは自分たちのしていることを本当に大切にしているから、多くの人を不快に思っている。皆、自分たちのしていることを大切にしていない。もし気にかけていれば、誰かが寄せ集めて作ったくだらないバンドにいたりしないだろうし、型にはめられたりもしないだろう。俺のバンドを嫌う人が心配だよ。だって、少なくとも俺は目的を持っている」。

Translation by Shizuka De Luca

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