キース・リチャーズのワイルド伝説19選(後編)

ネイキッド・アンド・アフレイド(1978)



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1970年台後半、リチャーズはブロンドのスウェーデン人女性、リル・ワーギリスと付き合い始めた。「最高に面白くてウィットに富んだ素晴らしい女性」とリチャーズは『ライフ』に書いている。ロサンゼルスのローレル・キャニオンの借家に泊まっていたある夜の未明、ワーギリスは別の部屋で火事が起きていることに気付き、リチャーズを起こした。(火事の原因は明かされていないが、2010年、リチャーズはデイリー・テレグラフ紙に自分が誤って火事を起こしたと語っている)「窓から飛び降りるまで数秒しかなかった。俺は半袖のTシャツのみ。リルは裸だった」とリチャーズ。アニタ・パレンバーグのいとこが2人を迎えに行き、安全な場所に移動させた。翌日2人が家に戻ると、「燃えた草の上に『ありがとう、キース』と書かれた大きなサインが貼りついていた」。無事だったのは、引き出し付きの収納たんすの中のパスポートとお気に入りのテープ、宝石類、銃と銃弾500発だった。この事件について詳しく述べた後で、リチャーズはこんな風に自問している。「俺の人生から何が分かるって、俺は強運だってことか?」


キースがベビーシャワーに行ったら、どんな問題が起こるでしょう?(1970)

Photo: Dave Hogan/Hulton Archive/Getty Images

ロン・ウッドの元妻、ジョー・ウッドは著書『It’s Only Rock ’n’ Roll: 30 Years Married to a Rolling Stone』で、1977年にパリのホテルでリチャーズに初めて会った時のことを回想している。「キースはカバンに手を伸ばし、銀のスプーンと薬の入った小瓶、ライターを取り出した。彼はものの数秒で薬を数錠くだき、少量の水を加えてあぶり、注射器に移してシャツの上から体に突き刺した」数秒後、リチャーズはにっこり微笑みながら「顔を上げ、私を見て"はじめまして。君の話はいろいろ聞いているよ!"」と言った。ジョーは全く動じなかったという。「すぐにキースが大好きになった。ロニーとキースは仲良しだったから、好きになれて良かった。最初に会った時からキースのやんちゃなところが一番好きだった」しかし、リチャーズの振る舞いはそんなジョーをも試すことになった。時は1970年代後半、ベビーシャワーでのことだった。ジョーはキースに、自分の母親の前ではコカインを使用しないよう頼んだが、当然のことながらキースはその頼みを無視した。「(夕食後)キースは突然"デザートの時間だ!"って宣言してコカインの入った大きなバッグを持ってきてテーブルの上に叩きつけたの」ジョーは、激怒して部屋を出て行った母親にこう言った。「彼はもう何年もコカインを使っていて、私には止められない。キースの生き方なのよ」


パイレーツ・オブ・ウェストン(1991)

Photo: Dave Hogan/Hulton Archive/Getty Images

数十年におよぶドラッグ、セックス、逮捕、伝説的奇行を経て、リチャーズが人々に真にショックを与えられる方法は、もはや落ち着くことしかなくなっていた。1991年、リチャーズはそれを実行に移し、妻のパティと幼い2人の娘とマンハッタンから緑豊かなコネチカット州ウェストンに居を移した。リチャーズは『ライフ』に、「森には先祖の魂が宿っているかのような原始的な静けさがある」と記し、一人になれる環境と大きな図書館を謳歌していることを長々と書いた。2002年、彼はローリングストーン誌に紳士らしいカントリー・ライフの報告をしてくれた。「朝はまず7時に起きる。本はかなり読んでいる。天気が良ければロングアイランド湾に船を出す。地下室ではよくレコーディングをしているし、曲を書き、演奏もしている。決まったルーティーンはない。家の中をウロウロして、家政婦がキッチンの掃除をしてくれるのを待ち、またすぐに料理なんかして汚してしまう。週に1度はパティと出かける。町で何かやっているようならそれを見に行く。大きな花束を手に、女房をディナーに連れて行くんだ。それが楽しみさ。」

Translation by Rolling Stone Japan

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