放送終了から50年、アニメ版ビートルズを振り返る


アニメの声は実際のビートルズメンバーの声とマッチしていないが、それがかえって良かったのかもしれない。土曜の朝のエンターテイメントとして新しい世界を創る時、旧来の意味での「本物らしさ」は要らない。ビートルズには素晴らしく魅惑的な錬金術師のような力があり、彼ららしい遊び心や驚きに満ちた世界は、「ビートルズによる作品」だけでなく、「ビートルズについての作品」からも感じられる。声を担当したのは、ポール・フリーズ――ランキン・バス・プロダクションのホリデイ・スペシャルという特番のアニメに何度も出演した、別名1000の声を持つ男――とフリーズ同様に才能あふれるランス・パーシヴァルだ。2人はこの仕事を楽しんだに違いない。

全39回(訳注:1回に2エピソードを含む全78話)の『アニメ・ザ・ビートルズ』は、1965年から67年に放送され、その後1969年まで再放送が続いた。公式ではないがブルーレイで修復版が発売されており、映像からは汚れが落とされ、素晴らしい仕上がりとなっている。

アニメーションの中のビートルズの姿は、ビートルマニア全盛期のまま変わっていない。モップ頭のジョンが「ツイスト・アンド・シャウト」時代のように脚でリズムを刻みながらリッケンバッカ―のギターをかき鳴らし、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を歌う姿は確かに妙だ。『アニメ・ザ・ビートルズ』の全エピソードの試聴は遠慮したいという人には、以下がお薦めだ。

第1回:『A Hard Day’s Night/I Want to Hold Your Hand』



雑学マニアはこの回に大興奮するだろう。トランシルバニア(よく見ると、アニメ版ビートルズはかなりのドラキュラファンだということが分かる)でのドタバタの後、4人は海に出て潜水艇で密航を図り、最終的に海の中でタコと踊る。想像してみよう。潜水艇とタコ。うーん。当時のビートルズに耐えられたのは、最初の1、2話くらいだろう。このエピソードを見れば、このシリーズは単にプレティーンを人気のスーパースターに夢中にさせるために始まったのではないということが分かる。輝くオレンジ色のパネルはマーク・ロスコの展覧会から来たのだろうか?

Translation by Satoko Cho

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