2016年アカデミー賞で分かった10のこと

6.#OscarsSoClueless(オスカーはまるで分かってない)

ステーシー・ダッシュのひどい困惑ぶりが、今年の授賞式にまつわる最も見当違いな出来事ではない。今年のアカデミー賞セレモニーは、すべてにおいて#OscarsSoWhite(オスカーは白人だらけ)論争を引き合いに出して構成されていたも同然だった。だが、この一点集中の施策が、アカデミーにとって恥ずかしく傷ましい多くのミスをさらけ出す結果となってしまったのである。70年代以降初めてノミネートされたトランスジェンダーの候補者を、アカデミーはテレビ放映しないと決断し物議を醸したことは、すでに報じられていた。しかし、そのダメージに追い打ちをかけるように、授賞式では貴重な時間を浪費して侮辱的演出を大量投入。バカらしい『スター・ウォーズ』の寸劇や、さらに最悪なことに3人の可愛らしいアジア人の子ども(1人はユダヤ系の名字)をプライスウォーターハウスクーパースの集計係として、端役でステージ登場させたのである。

7.「チボ」に万歳三唱

この男が「光の達人」と呼ばれるのには理由がある。もし納得できないとしても、まぁそんなことはあるはずないのだが、『レヴェナント:蘇えりし者』のエマニュエル・「チボ」・ルベツキは、史上最高の撮影監督の1人としていつまでも記憶されることだろう。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥのお気に入り撮影監督である彼は、予想通り、アカデミー賞の歴史において初めて同じカテゴリーで3年連続受賞(ルベツキのこれまでの受賞作は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『ゼロ・グラビティ』)を果たした。オスカーを逃したザ・ウィークエンドのヒット曲のごとく、ルベツキは「アーンド・イット(自力で獲得した)」のである。

8.『アクト・オブ・キリング』の悲劇が再び

アカデミーは2013年、ドキュメンタリー賞にジョシュア・オッペンハイマー監督の傑作『アクト・オブ・キリング』ではなく、『バックコーラスの歌姫たち』を選ぶという大失態を犯した。そして今年、アカデミーは過去の失敗から何も学んでいないことを証明したのである。20世紀の闇に葬られた大虐殺から続く影響を、巧みに照らし出したオッペンハイマーの『アクト・オブ・キリング』は、インドネシアの悲惨な歴史を作り出した張本人たちに、罪の重大さを突きつけている。この続編『ルック・オブ・サイレンス』で、オッペンハイマーは虐殺の加害者から今度は被害者に焦点を変えて、結果的に映画はさらに力強さを増した。この2作品は、私たちの時代だけに留まらず末永く残っていくだろう。だが、この知られざる過去について、オッペンハイマーのメッセージをより多くの観客に伝えるという、オスカーがまだ現代社会に影響を及ぼすチャンスがあったにも関わらず、その絶好の機会をまたもや台無しにしたのである。

9.ドナルド・トランプは全部門で敗退

未来の最高司令官ドナルド・J・トランプは、別に何の部門にもノミネートされていなかったが、だからといって彼が授賞式中に何度も打ちのめされる可能性がないとは限らない。受賞者の何人かがトランプの方針を非難しただけでなく、2つのオスカー像はメキシコ人に送られた。不屈のジャーナリストの必要性を描いた映画が作品賞を受賞し、ジョー・バイデンはこの夜、最も盛大なスタンディングオベーションを受けた。さらにアンディ・サーキスさえも、そのうち製作されるであろうトランプの伝記映画に出演するため、モーション・キャプチャー・スーツを着ることになるかもしれないと語るほど、トランプいじりを楽しんでいた。

10.ジャック・ニコルソンはひょっとして死んでいる?

授賞式で彼の姿を見た人はいるだろうか? 一応確認するために、彼の家に誰か見に行かせた方がいいかもしれない。




Translation by Sayaka Honma

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