ザ・プロディジーがEDMを強烈に批判「退屈でくだらない音楽だ」

2015年北米ツアー中のザ・プロディジー(Paul Dugdale)

ザ・プロディジーが語る、EDMブーム、フルアルバムリリースを止める理由

DJという存在がアメリカでスターとして認識されようになる遥か昔から、プロディジーは紛れもなく異端児だった。時に激しくシャウトする、猛るトロイの木馬のような存在であった彼らは、1997年にシングルをトップ40に送りこみ、アルバムはプラチナムセールスを記録した。あれから約20年が経ち、ディープハウスのトラックが全米チャートを制し、デッドマウスがボナルーフェスティバルのヘッドライナーを務め、エレクトリック・デイジー・カーニバルのようなフェスが13万人のオーディエンスを集める時代になった。アメリカは現在、エレクトロニックミュージックのルネッサンス期を迎えているといっていい。

アクスウェルやイングロッソが音楽業界を席巻する現在でも、ロックフェスを主な舞台としているプロディジーの立ち位置は独特だ。(2015年、デンバー、シカゴ、そしてトロントで開催されるライオット・フェスティバルに出演した)万を持してリリースされた彼らの6枚目のアルバム『ザ・デイ・イズ・マイ・エネミー』における、トレードマークのデジタルハードコアサウンドを押し出したアッパーで攻撃的な曲の数々は、リスナーに踊ることよりも暴れることを求めているようだ。ローリングストーン誌の取材に応じたリアム・ヒューレットは、現在のEDMシーンの隆盛、そしてアルバムというフォーマットに対する自身の考えについて語ってくれた。

ー現在アメリカではエレクトロニックミュージックのフェスが乱立していますが、プロディジーが出演するのはロックフェスに限定されているように思えます。

そうだな、変な話だけどね。この国じゃエレクトロニックミュージックのファンの住み分けが進んでしまってるように思うね。たとえばイギリスのクリームフィールズは、ダンスミュージックのフェスでありながら、ギターバンドなんかもたくさん出演している。でもアメリカはそういう感じじゃない。巨大なEDMのフェスの出演者はDJに限定されてるから、俺たちみたいなバンドはお呼びじゃないんだよ。

ーアメリカがエレクトロニックミュージックのブームに沸く中、あなたたちの新作はそれとは無縁の攻撃的でノイジーな内容となっていますね。

俺の作る音楽は常に何かに対するアンチテーゼなんだ。2012年にもそういう曲を5曲作ったよ。結局しっくりこなくて全部お蔵入りになったけどね。とにかく、俺は今の極端に商業的なEDMのシーンが気にくわないんだ。俺にはただのポップミュージックにしか聞こえない。俺たちはこれまでもずっと、エレクトロニックミュージックの攻撃的な面を強調してきた。そういう音楽はライブでこそ本領を発揮するんだよ。今回のアルバムも同じで、ステージでオーディエンスを熱狂させるために生まれた音楽なんだ。ラジオでかけてもらうためじゃなくてね。

ーロックやパンク、あるいはメタルのレコードにインスパイアされることもありますか?

そうだね、俺は尖った音楽ならなんでも好きなんだ。イギリスではダブステップが消費し尽くされた後、DJやプロデューサーたちはみんなハウスに回帰し始めた。つまんねぇなって思ったよ。このアルバムは、EDMも含めたそういう冒険心のない音楽やシーンに対する反動から生まれてきたんだよ。アルバムにはいろんな音楽の影響が反映されているけど、俺にとって最も大きなインスピレーションは昔からあまり変わってないよ。パブリック・エネミーとかね。

Translation by Masaaki Yoshida

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