フレディ・マーキュリー、死と対峙したクイーン最後の傑作とは

病に侵されたフレディ・マーキュリーが死と対峙した、91年のクイーンのアルバム『イニュエンドウ』を振り返る。 John Rodgers/Redferns/Getty


マーキュリーの45回目の誕生日にリリースされ、エイズの末期にあった91年5月に撮影されたPVに生前の最後の姿が収められているという点で、コンガをフィーチャーしたシンセサイザー・バラード『輝ける日々』は、『イニュエンドウ』の中で最も重要な曲と言える。『ラヴ・オブ・マイ・ライフ』の流れを汲むこのバラードは、モノクロ映像(後に、ドキュメンタリー『輝ける日々』で使用された未公開のカラー映像が合成された)の中の衰弱した姿から見て取れるように、マーキュリーにとって相当な負担であった。

「体調が悪化するほど、レコーディングへの意欲が高まっていくようだった」と、ドキュメンタリーの中でロジャー・テイラーは語っている。「自分自身に何かを課すことは、立ち上がるための理由になった。だから、彼は可能な限りどこにでも現れた。実際、この時期はかなり集中して仕事をした」

リリースから2週間、『イニュエンドウ』の評判が上々であると知ったマーキュリーは、鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに、新作の制作に取り掛かるようバンドを急かした。

「その時フレディは、「曲を書いてよ。もう長くないってわかってるんだ」と言った」と、メイはドキュメンタリー『輝ける日々』の中で明らかにした。「「どんどん詞を書いて。どんどん曲を書いて。僕は歌うから。きっと歌う。後は好きなように使って、仕上げてよ」」



そんなセッションから、95年のアルバム『メイド・イン・ヘヴン』が生まれた。ハイライトとなる『マザー・ラヴ』は、シンセサイザーを多用し、マーキュリーが亡くなるほんの数週間前にレコーディングされた。歌詞の中で「死ぬ前に安らぎがほしい」と、彼は心情を吐露する。しかし、『イニュエンドウ』が持つトーンや背景から考えて、マーキュリーが本当に残したかった言葉は、このアルバムのラストナンバー、『ショウ・マスト・ゴー・オン』の中にあると言っていいだろう。

「心の中は張り裂けそうだ」― 今になって、ボウイの『アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ』と符合するようになった、このパワフルな別れの曲でマーキュリーは歌っている。「メイクが剥がれ落ちても、僕は微笑み続けるよ」

Translation by Naoko Nozawa

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