関係者が語る『★』制作秘話:「ISISについて歌っていると言っていた」

『★』のセッションは7時間続くこともあったが、ボウイは1日中、全力で歌い続けた。「コントロールルームを出てスタジオに入ると、いきなりフルスピードになるんだ」とジュリアナ。「ボウイの歌はいつも素晴らしかった。驚くべきことだよ」。空き時間、ボウイはオフブロードウェイで上演中のミュージカル『ラザルス』の仕事をこなした(彼はその制作にキャスティングを含むあらゆる面で密に関わっていた)。

本作を貫く冒険心は歌詞にも及んでいる。ヒップホップのビートに即興的なサックス演奏が絡む『ティズ・ア・ピティ・シー・ワズ・ア・ホア』は、そのタイトルを17世紀の英国の劇作家ジョン・フォードの作品から取っている。『ガール・ラヴズ・ミー』の歌詞には、20世紀中頃のロンドンで使われていたゲイのスラング「ポラーリ」が用いられている。「『時計じかけのオレンジ』からも言葉を取ったと思う」とヴィスコンティ。「確かに歌詞はかなり変わっているけど、多くのイギリス人、特にロンドン子は全部理解できるんじゃないかな」。タイトルトラックでは繰り返し、「孤独なロウソク」という言葉が出てくる。これについてマッキャスリンは、「ISISについて歌っていると言っていた。信じられないよね」(ちなみにヴィスコンティとジュリアナは、ISISの話は初耳だった。これまでは、何についての曲なのかわからなかったそうだ)。

ボウイは明らかに、このアルバムにすべてを語らせるつもりだ。「『ヒーローズ』や『ロウ』といったアルバムをリリースした時には、こんなことをやっている人間は誰もいなかった」とヴィスコンティ。「こうして彼は、ニュー・ロマンティック・シーンを創出したんだ。彼はジャンルを跨ぐ男だった。『★』のイミテーション作品が出てくることが待ちきれない」


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★(ブラックスター)
ソニー
発売中

Translation by Kuniaki Takahashi

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