カート・コバーンの知られざる素顔:映画『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』監督インタヴュー

どちらの音源も『サッピー』や『フランシス・ファーマー・ウィル・ハヴ・ハー・リヴェンジ・オン・シアトル』のようなニルヴァーナの楽曲の初期のデモとともに『ザ・ホーム・レコーディングス』に収録されている。『レターズ・トゥ・フランシス』は意外にもイギリスの民族音楽的なムードが漂うコバーンのソロギターによる、娘に捧げた曲である。『アバディーン』は初期における自殺未遂について彼が語る不気味な朗読だ。痛ましく非難めいた『シー・オンリー・ライズ』はこれまで未公開だったコバーンの曲である。最後に収録されている大作『ド・レ・ミ(メドレー)』は美しく物悲しいバラードであり、コバーンが最後に書いた作品の一つだ。ついに11分に渡るオリジナルのデモヴァージョンがこのアルバムで完全に公開された。『ザ・ホーム・レコーディングス』(デラックス盤も、13曲を収録したいわゆるサウンドトラックである通常盤も)に収録されている曲はすべて、200時間にも及ぶ108本のカセット音源にあったものである。モーゲンはこれをコバーンのアーカイブから発見し、ドキュメンタリー映画を作るためのリサーチとしてすべてを聞いた。

「僕の話はすべてデラックス盤に関連するものだ」モーゲンはインタビューの最初にこう強く主張し、デラックス盤で語られる、より完全な物語のほうを好んでいることを認めた。彼はこうも指摘する。「このアルバムに収められたものは、これまでリリースされたニルヴァーナのアルバム、そして僕の知る限りにおいてはブード盤の形で出された作品にも含まれていない」。実際、『ザ・ホーム・レコーディングス』にニルヴァーナは存在しない。モーゲンは束の間、コバーンがベーシストのクリス・ノヴォセリックとドラマーのデイヴ・グロールとレコーディングしたレアな作品を数曲収録することを考えた。最終的にモーゲンは断固とした調子でこう語った。「私が最も関心を持ったのはカートの音源だけだったんだ」。

アルバムに収録する作品を選ぶ上で、フランシス・コバーンが何らかの役割を果たしていたのか、また拒否権を発動したのかを尋ねると、モーゲンはフランシスとユニヴァーサルは「基本的に僕の好きにやらせてくれた。僕が出来上がったものを提出した。次に届いたのは承認の知らせだったよ」と答えた。彼はこの信頼と自由裁量に対して感謝している。「この作品がイージーリスニングではないと言うのは控えておくよ」とモーゲンは語る。「でもリスナーには73分間きちんと座ってこの旅を続け、完全な物語を受け取ってくれることを望んでいるんだ」。

Translation by Yoko Nagasaka

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