2016年アカデミー賞、12の意外な脱落作品

Wilson Webb/The Weinstein Company, Warner Bros. Pictures

『クリード』、『キャロル』が完全に無視され、タランティーノとアロン・ソーキンも見当たらず

何ヶ月にもおよんだ映画祭、あれこれと意見を交わしあう昼食会、そして小規模の受賞式の数々の後、先先月、アカデミー賞が最終候補者を発表した。

いよいよ今年のオスカー・シーズンが現実味をおび始め、緊張がほぐれた。今年も例にもれず、予想外の嬉しいサプライズがいくつかあった(『エクス・マキナ』がベスト視覚効果賞にノミネート!)
そしてもちろん、さらに多くの衝撃的な脱落もあった。夢は打ち砕かれ、スタジオが費やしたキャンペーン費用は結局無駄になった。脱落して当然のだったものもあるかもしれないが、とんでもない間違いだったとして記憶されるものも多いのではないだろうか。その中でも最も顕著な例を挙げてみる。

1.最優秀作品賞、『キャロル』
原作は、ランドマーク的なパトリシア・ハイスミスの小説。1950年代のニューヨークで2人の女性が恋に落ちる、この心臓が止まりそうなピリオド・ロマンスは、無情で駆け引きのうまいハーヴェイ・ワインスタイン(オスカーのジョージ・パットン)がアワードシーズンを通して操り、また、昨年5月のカンヌ際初公演で激賞されたこともあり、候補入りは確実だと思われていた。この映画のレガシーは間違いなく今年最もひどい脱落として残ると考えられる一方、映画の根気や精密さはアカデミーのテイストに合わなかったかのようだ。なじみのある監督、トッド・ヘインズもまた、候補から外された。オスカーは映画がどれだけ深くヒットするかだけでなく、どれだけ広くヒットするかということも重要であり、『キャロル』はそこで問題にぶつかったのだろう。

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リドリー・スコット 提供:クリス・ジャクソン/Getty

2.リドリー・スコット、監督賞『オデッセイ』
今年のオスカー戦で『オデッセイ』がこれほど重要視されるとは誰も予想しなかった。特にリドリー・スコットの最新映画2作『悪の法則』と『エクソダス』が観客やオスカー投票者にいまいち受けなかったからだ。しかし、実際のところ、観客はジャガイモを自殖するマット・デイモンとABBAの音楽を目的としていたため、映画はオスカー戦には十分なヒットとなった。ノミネートが予想された部門の中で、ほとんどの人が監督賞は当然だろうと考えていた。リドリー・スコットが偉大な監督であることはもちろん、アカデミー賞は、限界を押し広げる技術成果を出す映画製作者への褒賞を実際に始めていたからだ(例えば、アルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』やアン・リーの『ライフ・オブ・パイ』など)。オデッセイは5部門にノミネートされているが、実際、受賞が予想されていた唯一の部門からは外れた。


3.マイケル・キートン、助演男優賞『スポットライト』
誰もが愛するマイケル・キートン。これはただ紛れもない事実である。そして昨年の『バードマン』で主演男優賞にノミネートされたおかげで、彼は再びスポットライト(うーん)を浴びている。静かに思い悩むボストン・グローブ紙の魅力的な編集者、ウォルター「ロビー」ロビンソンを演じるキートンを、アカデミー賞が外すとは考えられなかった。これはキートンのベストパフォーマンスのうちのひとつであり、依然として最優秀作品賞をさらうであろう映画魂だ。しかし結果は?残念ながら、今年のオスカーでは重要視されず、また、多くの共演者がいることから(全員が助演カテゴリーで競合している)比較的華やかな、ロビンソンの最も粘り強い部下を演じる、マーク・ラファロがノミネートされた。

Translation by Kayoko Uchiyama

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