『ブギー・ワンダーランド』(1979)

「モーリス・ホワイトは、『ブギー・ワンダーランド』のようなシンプルなダンスミュージックの規格に、新たな可能性を発見した」と、デイヴ・マーシュはアース・ウィンド&ファイアーの1979年のアルバム『黙示録』について、ローリングストーン誌のレヴューで記した。時代はディスコ全盛期であり、ホワイトと仲間であるジャズファンクの探訪者たちは、この複雑でソウルフルな楽曲にコマーシャルな輝きをプラスした。しかし、この曲はド派手で威勢がいいが、実はダークなハートを隠し持っている。苦悩と切望が、快活なアレンジと驚くほど不気味な歌詞のなかに潜んでいるのだ。アリー・ウィリスとジョン・リンドによるこの歌詞は、1977年のダイアン・キートンの陰鬱な映画『ミスター・グッドバーを探して』にインスパイアされたもの。痛みを和らげるためにブギーしよう(踊って痛みを振り落とそう)という表現は、ディスコの幻惑から目を覚ますときが、すぐそこまで迫っていると予告しているようだった。


『レッツ・グルーヴ』(1981)

1980年代初めまでにディスコブームは一気に衰退したが、アース・ウィンド&ファイアーはこのシンセサイザーのファンクで流行の変化を舵取りした。イントロでロボットのような音声が、バンドのこれまでの特徴である管楽器のライブ演奏にエレクトロニカを融合させながら、新たな10年の、新たなアース・ウィンド&ファイアーの幕開けを告げる。ホワイトはこの変化についてNMEに、「ヒット曲をプロデュースするときの感覚と原理を知っているという、それだけのことなんだ。物語を書いているようなものだ。ジャズより純粋さが劣るとかいうことでもない。新しいレコード『レッツ・グルーヴ』を聴いてみてほしい。この曲にはごまかしなんかない。ただ没頭して制作したんだ。誠実にエネルギーを注いだんだよ。ねぇ、この曲を一緒に楽しもう、一緒にシェアしようと言っているだけなんだ」と説明し、実際、多くの人たちがこの曲に沸き立った。『レッツ・グルーヴ』は100万枚以上を売り上げ、グラミー賞最優秀R&Bボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされた。

Translation by Sayaka Honma

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