『リーズンズ』(1975)
昔ながらのラップ・ファンなら、エリック・サーモンの『ステイ・リアル』のビデオに出てくる、シャワーを浴びながらサーモンが『リーズンズ』を歌うシーンを覚えているだろう。アース・ウィンド&ファイアーのアルバム『暗黒への挑戦』に収録されているフィリップ・ベイリーのバラードだが、ベイリーと同じ音階で歌おうと、多くの人が挑戦してはあのように失敗しているのだ。『リーズンズ』はカラオケの名曲というだけでなく、アース・ウィンド&ファイアーが先見性のあるファンク・ロック・バンドから、イージーポップ、ジャズ、ディスコを包含した世界的なバンドへといかに進化したか、その象徴となった。ベイリー、チャールズ・ステップニーと共同で楽曲制作したモーリス・ホワイトは、「僕たちの目的は単純に、全ての人に届けるということだった」と、1975年にビルボード誌に説明している。


『ブラジルの余韻(ベイジョ)』(1977)
『ブラジルの余韻(ベイジョ)』は、大ヒットシングル2曲を含むアルバムの中盤に収録されている、ほんの80秒ほどのグルーヴだ。しかし、そのファルセット・ディスコ調の歌声「ベイジョ!ベイジョ!バ・ダ・バ・バ・バ!」は、ヒップホップにも大きな影響を与えた。ヒップホップ初期のニューヨークのDJたちは、MCがラップするのにこの曲を合わせた。サザン・ヒップホップの先駆者MCシャイDは、1987年のハードロック調シングル『I’ve Gotta Be Tough』でこの曲を引用した。また、ア・トライブ・コールド・クエストは画期的デビューアルバム『People’s Instinctive Travels and the Paths of Rhythm』に、ビッグ・パンはチャート40位に入った1998年のヒット曲『Still Not a Player』に引用した。ブラック・アイド・ピーズからエムエフ・ドゥームまで、誰もが嬉々として恍惚としたこのサビ部分を借用するのである。ちなみに、「ベイジョ」とはポルトガルで「キス」の意味だ。

Translation by Sayaka Honma

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