ジャック・ホワイトら、米国音楽の歴史に関するドキュメンタリーをプレミア公開

ヴァイオリンやマンドリン、アップライト・ベース、使い古されたホワイトのアコースティック・ギターに合わせてカントリー・フォーク曲『Matrimonial Intentions』(「結婚するつもりがないのなら、ちょっかいを出さないで!」)を歌いながら、シングル・マイクの周りに集まるホワイトと彼のバンドの様子が映し出された。メンフィス・ジャグ・バンドによる1928年当初の歌詞を忠実に歌い上げている点を除けば、荒っぽい現代のヒップホップのような印象を与える楽曲『On the Road Again』の収録にはナズが参加した。

「その一瞬で完成させるためにすべての集中力と注意力を注ぐことができるから、こういう感じのレコーディングは大好きだよ」とバーネットは上映前に語った。「彫刻家が彫刻刀を当てる瞬間みたいで美しいものだ。だから今現在も含めて偉大なレコードの多くはこういう方法で作られている」。

ジャック・ホワイトは本ドキュメンタリーでその時の様子をこう説明した。「この一瞬のために周到に準備を整えて臨む。まるで教会に行く時みたいだった」。

この映画の抜粋上映後、マクマホンとバーネット、ホワイト、ブルース・ミュージシャンのタジ・マハールによる、レコード産業の苦悩の過去と現在を比較したパネル・ディスカッションが行われた。「ラジオが出現し、ラジオはまったく新しい存在だった。そして皆が言っていた」と述べたマハールは不機嫌そうな声でこうつけ加えた、「「もしラジオで音楽が無料で手に入れば誰もレコードを買いに行こうとしない!」と。ほら、聞き覚えのある響きがあるだろう?「もしインターネットで音楽が無料で入手できれば、誰がCDを買いに行くのか?」って。当時から今までの間に彼らはどれだけ儲けたのだろうか」?

英国生まれのマクマホンは、ニューヨークの公共テレビ放送局のWNETとBBCからの依頼を受けて3年間の映画制作プロセスを終えるためにロサンゼルスに移住した。「アメリカでいちばんの農村地域に足を踏み入れたら、自分の曽祖父母を思い起こさせるようなケルト人の古い伝統を目にすることになる」と、元ミュージック・ビデオ監督は述べた。「英国ではほとんど失われてしまったけれど非常に美しかった社会の姿だと思う。アメリカにはほとんど何も変わっていない地域がある。だから、これは彼らの物語を伝えるチャンスなのだ」。

本ドキュメンタリーにも出演しているマハールとアヴェット・ブラザーズは、プレミア公開後に短いセッションを披露した。マハールは銅製のアコースティック・ギターを使用したフォーク・ブルース曲2曲の演奏準備をしながら、死期に近づいた頃の高齢のブルース・ミュージシャン、ハートに会った時のこと(この出来事は映画でも取り上げられている)を振り返った。「19歳の時にミシシッピ・ジョン・ハートに会いに行った。今の俺は彼と同じ世界にいる」と、現在73歳のマハールは笑いながら語った。

アヴェット・ブラザーズは無駄のない最低限の装備を使用して3曲のパフォーマンスを行った。1927年にアンクル・デイヴ・メイコンによって初録音が行われ、映画の中でバンドが演奏した曲『Jordan is a Hard Road to Travel』から始まり、セス・アヴェットが奏でるアコースティック・ギターに乗せてメンバー3名がマイクを囲んで歌うゴスペル聖歌『Just a Closer Walk With Thee』へと続いた。(アヴェットはパークシティ・ライヴで実施された映画公開を祝ったアフターパーティ・コンサートにおいてもフルメンバーで演奏を行った。)

今回のプレミア公開に先駆けて、シンガーでバンジョー奏者のスコット・アヴェットはローリングストーン誌に次のように語ってくれた。「俺たちはあの機械についての話を聞いてすごそうだなと思った。バンドメンバー全員が昔の音楽に興味を持っている。俺たちは自分たちのショーでそれを披露し、バンドのバスやホテルでも演奏した。初めて再生した音を聴いた時、俺たちはただただ圧倒された」。

セス・アヴェットは言い加えた:「アコースティック楽器の音を聴くと、その人の魂とつながる何かが人間の中にあると思う。アコースティックの音色はろ過されないのだ」。

Translation by Shizuka De Luca

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