マックルモア&ライアン・ルイスと共演、伝説のラッパー3人が語る過去、現在、未来

─『Downtown』のミュージックビデオでは原付バイクに乗っていた。それ以前に乗ったことはあった?

カズ:この質問にはモーが答えるべきだ。


クール・モー・ディー:原付は最悪のアイデアだったな。俺の得意分野じゃなかったし、好きになれなかった。俺はそのシーンには加わらなかった。

最近のビデオは手で持てる小さなカメラで撮影する。俺たちがどこかの路地に入っていくと、巨大なバルーンの人形があってパレードをやっていた。マックルモアが口火を切って、彼は本当にこのアイデアに責任をもっているのだと思った。ただ叫んでいたんじゃなくて、確かな仕事をしていた。彼は文字通り、この曲とコンセプトに「乗って」いたんだ。

─こうしたコラボはもっと以前からあってもよかったのではないか?

クール・モー・ディー:まったくだ。

メリー・メル:若いアーティストたちは先輩アーティストから別に支持される必要はないと思っているのだろう。どっちみち今の彼らの多くには本物かどうかという問題があるから。彼らは本当の自分ではないイメージを維持しようとしている。ヒップホップ界で、嘘偽りのない姿を見せていたのは、事実上、俺たちだけだろ?

─『Downtown』でのコラボはまるで「ジュラシック5」が何年も前にやったのと同じ感じがした。

カズ:ジュラシック5はある意味で俺たちをまねることによって俺たちに敬意を表していたと思う。彼らはかつての俺たちの時代を呼び戻してくれて、しかもとても自然に聴こえた。俺は光栄に思っている。
とはいえ、この何年も俺たち以外にこんなことができたアーティストはいたか? ラッセル・シモンズの「デフ・ジャム・レコード」からパフ・ダディの「バッド・ボーイ・レコード」まで。(ヒップホップ・デュオの)ドクター・ジキル&ミスター・ハイドのジキルことアンドレ(・ハレル)が「アップタウン・レコード」のトップだったときには、彼はできる立場にあった。その後はパフィができる立場にあった。俺たちの世代に近くて、こうしたことができる立場になったのは数えるほどしかいない。その理由のひとつは、彼らは自分の道を見つける過程の途中であり、自分のイメージや王朝を築こうとしていたからだ。それの邪魔になりそうなことはやりたくなかった。だがそんな心配なんかしていない誰かを見つけないといけない。俺たちは誰かを脅かすような存在じゃない、そうだろ?

─この数週間であなたたちの生活はどのように変わった?

クール・モー・ディー:見てのとおりだ。過去4年間よりも、この2週間ほどのほうがたくさんテレビに出ている。いや、過去5年、10年だな。

カズ:俺たちのソーシャルメディアはメッセージやフォロワーとかであふれ返っている。この曲のおかげで、俺たちは新しい世代に触れている。しかも、その衝撃はまだこれからもあると思う。現時点ですべてが俺たちの予想を超えているから、これからどうなるかは予測もできない。

メリー・メル:俺は2年ぐらい前から、昔のアーティストと若いアーティストのコラボのようなものの人気が高まってくるんじゃないかと思っていた。古いものが新しくなる時代がくると感じていたんだ。俺がクラシック・ヒップホップに対する需要はあると言っていたことは当たった。

クール・モー・ディー:今はどの大都市にもクラシック・ヒップホップを流すラジオ局がある。ラジオは広告収入に支えられている。そして18歳に宣伝できることは限られている。だからラジオにとってはもっと年配の層のリスナーが必要なんだ。
それに俺がいつも言っているように、年を取っていっているのは俺たちだけじゃない! だから俺がアルバムを100万枚売ることができたら、100万人は死んでいないことがわかる。クラシック・ヒップホップのマーケットはちゃんとあるのさ。

─ラジオで流される局の著作権のチェックが強化されたのはいつから?

クール・モー・ディー:米国作曲家作詞家出版者協会によるチェックは、おそらく2013年から厳しくなった。幸い、繰り返し強化されている。

俺が昔、俺たちをリスペクトしないR&Bアーティストたちにいつも言ってたのは、「俺たちは自分で曲を作っている」ってことだ。ラッパーはたいてい自分で曲を書いている。著作権料があったからこそ、俺は過去20年間生きてこられた。ウィル・スミスが『ワイルド・ワイルド・ウエスト』をサンプリングしたときはビッグヒットになったから、俺が最初に歌っていたときよりも多くのカネが入ってきた。それからウィル・スミスの映画のカネも入ってきた。まるでプレゼントをもらっているみたいにカネが入ってくる。

─メル、あなたにも著作権料が入ってきているの?

メリー・メル:それがあるから、俺はまだこの世界にいられるんだ。3か月ごとに入ってくるよ。そのおかげでリスクのある仕事や、やりたくない仕事をしないですむ。

─カズ、あたなは・・・・。

カズ:生きるために働かないといけない奴もいるんだ(笑)

メル:カズはまだポールダンスで稼がないといけない(笑)

カズ:まだラップダンスをやってるよ。『Rapper’s Delight』(シュガーヒル・ギャングのヒット曲だが、カズは盗作されたと主張している)の著作権をちゃんともっていたら、ここにはいないだろうがな。それでもこの10年ほどは、わずかな著作権料をもらっている。俺たちコールド・クラッシュにはヒット曲がなかったけど、それでも演奏されたりミュージックビデオが見られるたびに著作権料が発生し、その大半は俺のところに入ってくる。俺もちゃんと小切手をもらってるよ。

─ビデオ・ミュージック・アワードの感想は?

クール・モー・ディー 「俺たちが出て行って、観衆の熱狂ぶりを感じたとき、「神話は覆された」と思った。若い人たちは昔のアーティストに反応しないという神話があるが、そんなのは俺たちが出て5秒で覆された。あそこにいた若者たちの90%は俺たちが誰かわかっていなかっただろうが、それでも彼らは俺たちのエネルギーを感じてくれていた。どんな形であっても芸術は永遠なんだ。

マックルモア&ライアン・ルイスは、今年9月に待望の単独来日が決定。 「マックルモア&ライアン・ルイス ジャパン・ツアー 2016」と題し、 9月14日(水)Zepp Diver City、9月16日(金)Zepp Nambaでのライヴが決定している。また、9月18日(日)に横浜赤レンガ野外特設ステージにて開催される「MTV presents SOUL CAMP 2016」へも出演する。

メリー・メル、グランドマスター・カズ、クール・モー・ディーが出演した『Downtown』はこちら。



Translation by Nao Nakamura

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