マックルモア&ライアン・ルイスと共演、伝説のラッパー3人が語る過去、現在、未来

─以前からマックルモアを知っていた?

メリー・メル:ヒットしたアルバムがあったから、なんとなくは知っていた。でも彼のキャリアをフォローしているほどではなかった。

カズ:俺はDJとして、よく知っていた。彼のヒップホップのキャリアというより、DJとして彼の音楽をよく聴いていた。

クール・モー・ディー:俺の場合は一般大衆と同じで、ヒット曲で「ああ、あいつか」とわかるぐらいだった。だから『スリフト・ショップ』と『Can’t Hold Us』で、彼のことを認識していた。

電話をもらった後、すぐに彼のほかの曲も聴いてみた。『White Privilege』という曲がとても印象的だった。彼は俺が思っていたよりも深みがあったんだ。彼のことを新しいアーティストだと思う人が多いが、アンダーグラウンドで10年もやってたという。彼には表面的には見えない何かがあると思った。

─レコーディングはどうだった?

クール・モー・ディー:コメディー。まったくのコメディーだった。

カズ:ちゃんとラップしたのは、おそらく30分ぐらい。

メリー・メル:あとは全部、ふざけたりバカ話ばかりだった。

カズ:冗談を言い合って、ふざけて、でもやるときは完璧にやった。メリハリさ。

クール・モー・ディー:こいつらとは、もう35年以上のつきあいだが、正直、あのレコーディングセッションまで、こいつらがこれほどクソ面白いとは知らなかった。(笑いながらメリー・メルを指して)こいつのせいで、「バイアグラなしではやめてくれ」って言い続けてたよ。

カズ:メリ・メル、クール・モー・ディー、グランドマスター・カズがコラボするのは初めてだった。誰もこんなの見たことがない。一緒にひとつのプロジェクトをやったのだから、俺たちの絆はまた少し固くなった。自ら「スリー・キングズ」と呼んでいて、一緒にアルバムを作る計画もある。

メリー・メル:俺は運命を信じているから、2度目のチャンスを得たという言い方はしたくないが、まさにそれに近いと思う。しかもまったく新しいオーディエンスを前に。

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クール・モー・ディー、マックルモア、グランドマスター・カズ/1981年ハーレム(Courtesy of Joe Conzo Archives)

─今の若いアーティストで気になるのは?
(3人とも笑い、カズは毒舌をはきそうなメリー・メルの口を手でふさいだ)

クール・モー・ディー:ケンドリック・ラマーは本当に好きだ。J・コールもいいし、エイサップ・ロッキーもいい。それから、人気者を選ぶのはクリシェかもしれないが、ドレイクはそのアプローチの仕方がクリエイティヴだと思う。俺たちがやったようなヒップホップではないが、世代は移り変わっていくものだ。

今のやつらは、「俺は歌えないけど、とにかくフックだけは歌ってる」という感じが多い。オーディエンスも、そういう人はシンガーではないと理解している。それでも彼らは同じフレーズを単調に繰り返し歌うんだ。俺たちも『Body Rock』でやったし、ザ・コールド・クラッシュ・ブラザーズもそうだった。今はそういったチャントをグループではなくソロでやっている感じだ。

まるでジェイ・Zがヒットを飛ばしたときに、若いやつらの90%が自分を何かしらハスラー(ドラッグ・ディーラー)に関連づけようとしたのと似たようなもの。みんなが同じ思考になって、自らの可能性を制限してしまう。だが、じっくり聴いてみると、ケンドリック・ラマーはそんなことをやってないし、ドレイクもやっていない。俺が好きなやつらはやっていないんだ。」

─J・コールが最たる例だろう。彼は今、どのラッパーよりも多くのレコードを売っている。だがYoung Thugのようなラッパーがミックステープを出すときと同じような注目は集めない。

クール・モー・ディー:89年に(オールスターを集めて)「ストップ・ザ・バイオレンス・ムーブメント」を結成したが、ギャングスタよりも人気だったにもかかわらず、ニュースをさらったのはギャングスタ・ラッパーだった。ギャング映画を見に行って、みんなエリオット・ネス(財務省捜査官)よりもギャングのアル・カポネに共感してしまうようなもの。結局はエリオット・ネスが勝つのに、アル・カポネのほうが格好いいと思ってしまう。アル・カポネは牢屋に入れられるのに。

Translation by Nao Nakamura

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