12位『ローラーボール』(75)
ノーマン・ジュイソン監督が近未来のエクストリームスポーツを描いた『ローラーボール』には、偏執的な政治スリラー、マクルーハンを彷彿とさせるメディア風刺、ウルトラバイオレンス、流行のスポーツ選手への盲信、そしてロバート・アルトマン顔負けのズームショットなどさまざまな要素が盛り込まれている。この世界で人気のあるローラーボールとは、ローラーダービーとモトクロス、フットボール、ボクシングを組み合わせた流血のスポーツで、ローラーボール史上最高の選手と呼ばれるのがジェームズ・カーン扮するジョナサンだ。だが、世界を支配する大企業の重役が自分たちの都合のいいように試合を操作し、ジョナサンのようなトップ選手でさえ自身の人気や力を自覚できずにいる。ディストピア的なデスマッチでクライマックスを迎える、リンクで繰り広げられるアクションは、今見ても扇動的な残酷さに満ちている。(EH)


11位 『ウエストワールド』(73)

近未来、普通の観光地に飽きた裕福な人々向けに、3つの世界を舞台に人間そっくりのロボットが何でも要求に応えてくれる豪華なテーマパークが作られる。ところが、制御機能の故障によりロボットたちが来園者を殺し始め、ついにはユル・ブリンナー扮する不敵で攻撃的なガンスリンガーのアンドロイドと対決する。作家マイケル・クライトンが初メガホンをとった『ウエストワールド』は、のちのコンピュータウィルスの増殖を予見しているほか、CG技術を活用した先駆的作品でもある。視覚的には今見ると古くさいのは否めないが、その後の『ロボコップ』から『ブレードランナー』にいたる多くの作品に見られる邪悪な企業体を早くも登場させた映画としても評価される。(JN)


10位『SF/ボディ・スナッチャー』(78)
リメイクの傑作といえば必ず名前が挙がるであろう本作は、マッカーシー時代を背景にしたドン・シーゲル監督作『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』を、フィリップ・カウフマン監督が舞台を78年のサンフランシスコに変えて映画化。ドナルド・サザーランド扮するトレンチコート姿の公衆衛生調査官は、市民が姿はそのままだが無感情な複製人間と化していることに気づく。60年代の傷ついた残骸に致命的な一撃を与えるかのように、謎の現象のせいで人々は隣人やコミュニティや環境に対して不信感を抱くようになる。カウフマンは、ノワール風のミステリーから超常現象スリラー、SFホラーまでさまざまなジャンルやトーンを見事にまとめ上げ、昇華した。そして、ラストシーンの衝撃はまさにトラウマものだ。(EH)

Translation by Mari Kiyomiya

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