ニュー・オーダー、ダンスロックへの回帰に成功した内部事情

2014年、ニューヨークのカーネギー・ホールで実施されたチベット・ハウスのチャリティ・イベントの主催者は、イギー・ポップとの合同パフォーマンスをサムナーに依頼した。このふたりはこのイベントで、ジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート」を歌うことになった。「最高だったよ」とサムナーは話す。「俺たちがこの歌を歌った時、イアンが笑っているんじゃないかと想像したよ。彼にとって重要な意味を持つだろう」。

その後、サムナーはあるオフの夜にテレビを見ながら無意識に詩の一節を書いていた。彼は退屈になるといつも、詩を一行書き留めていた。詩ができ上がった時、彼はモリスとギルバートが書いた音楽によく合うことに気づき、その曲が「ストレイ・ドッグ」になったのだ。彼は思いつきで、新しい知り合いにこの曲で歌ってくれるかどうかメールで聞いてみた。彼は「やあ、バーナード。イギーだ。いいよ、引き受ける」と返信を受けた。

「俺がイギーに会った唯一の機会は、こんなありさまだった」とモリスは話す。「本当に恥ずかしい話なんだ。俺が持っていたのはイギー・ポップ&ストゥージズのファースト・アルバムで素晴らしい作品だけど、本当に分厚いレコード盤だったんだ。すごく重いアルバムだった。物理的な意味で、俺が持っていたなかでいちばん厚いアルバムだった。それで彼に会った唯一の機会に、『ストゥージズのファースト・アルバムを持って来ました。本当に重いアルバムですよね。なんてことだ。重さが重いっていう意味で。そういう意味ではなくて。ああ、くそ。俺はこの瞬間をかなり台無しにしたよな』って話したんだ。彼は俺のことを相当バカだと思っているだろう」とモリスは笑う。

「イギーが(「ストレイ・ドッグ」で)した仕事を聴いた時、俺は驚かされた」とモリスは続ける。「まるでちょっとした映画みたいだ」。

サムナーがイギーと仕事をした数ヶ月後、ニュー・オーダーは『ミュージック・コンプリート』のもうひとりのゲスト、ラ・ルーのエリー・ジャクソンに会った。彼女は今回、「プラスティック」と「ピープル・オン・ザ・ハイ・ライン」、「トゥッティ・フルッティ」でバック・ヴォーカルを務めているが、バンドが仕事を頼むまで、彼女が心を開くのを待たなければならなかった。だが、この時の場合は、彼女を初めてシンセサイザーの虜にさせたのがニュー・オーダーだったため、彼女はバンドに会うことに緊張していたからだ。

「あなたはバンドに会う前に、確実ではないけど彼らが来ることを伝えられていたとする。特に彼らが有名な人たちだったら、『ああ、彼らが挨拶に来てくれるらしいけど、本当に実現するかしら』って思うでしょ」とジャクソンは彼らとの出会いを振り返る。「とにかく、バーナードは挨拶に来てくれて、私はそのことがうれしかった。私はライヴが終わってから彼らの楽屋を訪ねて、ファクトリー・レコードから「ラヴ・テンポ」という曲を出しているバンド、クアンド・クアンゴについての話をした」。

「『(クアンド・クアンゴのヴォーカル兼DJの)マイク・ピッカリングがこの曲をプロデュースしたのはすごく妙だと思いませんか』と私は言ったわ」と彼女は続けて話す。「それで彼が『マイク・ピッカリングはそのプロデュースをしていないよ、この俺がしたのさ』って言ったから、私はこの曲がこんなに好きなのはそのせいなんだとわかった。楽しい瞬間だったわ」。

Translation by Shizuka De Luca

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