ニュー・オーダー、ダンスロックへの回帰に成功した内部事情

フックとの分裂後起こったことは、両者間の険悪な堂々巡りの議論がメディアで繰り広げられるまでになってしまった。サムナーの自伝『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく』(米国では2015年11月3日に出版)に対して、フックは昨年10月に否定的なレヴューを執筆し、言い争いを始めたのはフックだとする自伝内のサムナーの主張に対して異議を唱えた。

「本当に残念だよ」とサムナーは述べる。「彼を気の毒に思うよ。彼はバンドを離れたけど、それ以降バンドを脱退したことについて不満を言っている。だけど俺は彼の幸運を祈っているし、俺に数々の罵声を浴びせる代わりに自分が選んだことで上手くいってほしいと願っている。彼は相当怒っている。あなたがもし人生で進路を選択するとしたら、自分が選んだ道のことで他人を非難しないでほしい」。

「バンド・メンバーがメディアで罵り合うのは本当に嫌だよ」とモリスは言う。「もし何か問題があるなら、公にしないで解決すべきだ。だって見苦しいだろ」。

「皆を少し退屈させただろう」とサムナーは話す。「彼は嫌な印象を残した。ピーターとは素晴らしいアルバムをいくつか作ったと思っている。俺は彼がミュージシャンとして成し遂げたことを決して軽蔑したりしない。でも俺たちは良い関係でいることができなかった。だから彼は自分のことをするために出て行ったし、それは彼の選択だ」。

ニュー・オーダーが自分たちのことを続行する決意をし、ニューアルバムを作ることが決まると、彼らは進むべき方向性を決める必要があった。2001年の『ゲット・レディー』と2005年の『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』が両方ともかなりギター指向だったこともあり、ギター主体のアルバムを作るのは燃え尽きた感があったため、サムナーはダンス・アルバムを作ろうと決意した。実際のところ、モリスもエレクトロ・バンド、ファクトリー・フロアーの曲でリミックスを作ってから、ダンス・ミュージックに回帰しつつあった。ローリングストーン誌がサムナー、モリスのそれぞれに個別で音楽の好みをたずねた時、2人ともホット・チップのファンであることを明かしてくれた。だからダンス・アルバムというのは、彼らが作ることを宇宙に命じられたかのようだった。

「シンセサイザーやエレクトロニクスに回帰するのは今しかないという感じだった。技術が進歩した新しい方法に取り組むのも面白かったよ」とサムナーは述べる。「俺たちはずっとやりたいと思ってきたことが今できるんだ」。

モリスとギルバートは、サムナーから引き出した曲のアイデアに取り掛かった。彼らはイタロディスコへの愛を再考し、それが『ミュージック・コンプリート』版の「トゥッティ・フルッティ」になった。「俺たちは制作を始めた時、イタリアのエレクトロ系のアルバムをたくさん聴いた」とモリスは述べる。「俺はそれらのアルバムが誰の作品であるかさえわからない。ある男が俺たちによくミックステープを送ってくれていたんだ、たいていそういうテープは車の中で聴くだろ。俺たちの車にはこのイタリアン・エレクトロのテープしかなかった。初期の頃からこの影響を受けていたから、俺たちはイタリアの陽気な雰囲気を取り入れようと決めたんだ」。

Translation by Shizuka De Luca

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