ロジャー・ウォーターズインタヴュー:ジミヘンとのピンク・フロイドツアー、映画『ザ・ウォール』まで

Photo: (Jeff Siner/Charlotte Observer/MCT/Getty)

ライヴコンサートを収録したパーソナルな映画『ロジャー・ウォーターズ:ザ・ウォール』を記念して、シンガー・ソングライター、ロジャー・ウォーターズがピンク・フロイドのこの超大作を振り返る

自身の新作コンサート映画『ロジャー・ウォーターズ:ザ・ウォール』のラッシュを見ながら、ロジャー・ウォーターズは何かが足りないと感じていた。作品全体を通して、ステージ上に築かれた巨大な壁には、愛する人を失った人、戦火に倒れた人など、戦争によって人生が取り返しのつかないほど変えられてしまった人たちの画像が次々に映し出されていく。その壁に囲まれて、バンドがピンク・フロイドの1979年の歴史的なダブルアルバムを演奏している。

「私は、壁に写真が映し出されている死者のことにこだわりすぎていた」とウォーターズは語る。72歳のシンガー・ソングライターは、カジュアルな黒のTシャツにジーンズ、紐なしの靴を履き、マンハッタンにあるソニービルの最上階にあるスイートルームのカウチにゆったりと腰掛けている。「そこで私は気がついたんだ。私自身の語りが足りないということにね。そこで私は、祖父の墓を訪ねる旅をして、父を弔うというアイデアをひねり出した。おまけに、これでベントレーの中古を買う言いわけもできたわけだ」。ウォーターズはうれしそうに大きくほほえんだ。

ウォーターズのロードトリップを追加し、その映像を『ザ・ウォール』の楽曲の間にシュールに挟みこむことで、この作品は凡庸なコンサートフィルムとは一線を画することとなった。この作品は、2010年から2013年にかけて、実に219公演が行われたというウォーターズの「ザ・ウォール」コンサートの驚くべき製作風景を壮大なスケールで描いているだけでなく、戦争のむなしさや、ウォーターズ自身に刻まれた喪失感をも伝えている。曲の合間には、第二次大戦での父の死を知らせる母宛の手紙を読んだウォーターズが泣き崩れるシーンもある。それがコンサートの記録映像とあいまって、『ロジャー・ウォーターズ:ザ・ウォール』はさらに感動的で希望に満ちた作品となる。

「『映画館の席で、じっとロックコンサートを見る』というのは、やはりちょっと無理があるから、語りを織り込んだのはいい息抜きになるんじゃないかな」とウォーターズは語る。「それに、ロードムーヴィーのくだりは、作品全体の政治的、人道的哲学を明らかにしてくれている」

ウォーターズはローリングストーン誌のロング・インタヴューに応じ、彼にとっての『ザ・ウォール』の意味合い、そして将来の計画について語ってくれた。(『ロジャー・ウォーターズ:ザ・ウォール』2015年9月29日世界劇場公開した。)

Translation by Kuniaki Takahashi

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