マーティン・スコセッシ映画ベスト10

3. 『レイジング・ブル』
ジェイク・ラモッタが70年に発表した自伝『レイジング・ブル:マイ・ストーリー(原題)』は、40年代に活躍したミドル級ボクサーの生き様と個人的な問題が綴られた、読み物としては平凡な作品だった。ところがそれがマーティン・スコセッシの手にかかれば、史上最高の映画へと様変わりする。主演のロバート・デ・ニーロは、ラモッタ役を全身全霊で演じた。ボクシングシーンのために体を絞ったかと思えば、引退して60年代には怪しげなバーでコメディアンとして活動していたラモッタの体型を再現するために27キロも体重を増量した。そしてジェイクの弟ジョーイ役にキャスティングされたジョー・ペシは、当時はまだ無名の俳優だったが、スコセッシはその才能を見逃さなかった。『レイジング・ブル』は80年、評論家の絶賛の嵐のなか公開されたが、その後も評価は高まるばかりだ。

2. 『タクシードライバー』

『ミーン・ストリート』と『アリスの恋』を立て続けにヒットさせたスコセッシは、76年当時、何でも自分のやりたい映画を作ることができる力と自由を手にしていた。その自由から生まれたのが、精神を病んだニューヨークのタクシードライバーの姿を描いた本作である。男は選挙事務所で働く女性に夢中になるが、彼女に拒絶されればされるほど、その挙動は狂気を帯び、そしてついにある思い切った行動に出る。一方で、男はジョディ・フォスター扮する10代の娼婦と親しくなるが。スコセッシとデ・ニーロは、本作の続編製作について何度か話したことがあるというが、実現は難しそうだ。それでいいのではないだろうか。世の中には、手をつけないほうがいいものもあるのだから。

1. 『グッドフェローズ』

ハリウッド映画の歴史のなかで、『グッドフェローズ』ほど何度でも見たくなる映画があるだろうか? 『ビッグ・リボウスキ』もいい勝負かもしれないが、こちらはある程度そういう気分の時にきちんと頭から鑑賞しなければ、本当の意味では楽しめない。だが『グッドフェローズ』は違う。何度テレビで放送されようとも、途中から見始めようとも、そしてテレビ局が大幅にカットした編集版を流していようとも、一度見出したらチャンネルを変えることはできないのだ。すべてのシーンに説得力があり、すべてのセリフが引用に値する。映画はとてつもないスピードで展開し、ラリったレイ・リオッタがヘリコプターに追われる頃には、こちらも彼の恐怖やパラノイアを実際に体験しているような気になる。だからこそ、今回の読者投票でも、2位のほぼ3倍を得票する圧勝となったわけだ。

Translation by Mari Kiyomiya

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