マーティン・スコセッシ映画ベスト10

Photo: (Paramount Pictures/Everett)


8. 『アフター・アワーズ』

80年代半ば、スコセッシはちょっとしたスランプに陥る。『キング・オブ・コメディ』が興行的に失敗したため、悲願の企画『最後の誘惑』の製作費を調達できずにいたのだ。そこで、代わりに監督することになったのが、風変わりな快作『アフター・アワーズ』である。カフェで美女と出会った主人公のプログラマーが、ソーホーに住むという彼女を訪ねていった先で体験するとてつもなく奇妙な一晩を描いたブラックコメディだ。大ヒットとはいかなかったものの、評論家からは高く評価された。本作の翌年、スコセッシは再びハリウッド映画界に協力するかたちで『ハスラー2』を監督。そして88年、ようやく『最後の誘惑』の製作に着手することになる。

7. 『カジノ』
『カジノ』は、決して『グッドフェローズ』の続編ではない。それぞれにまったく異なる登場人物を描いた、まったく異なる映画だ。だがそのうえで、この2作はやはり密接につながっていると言わざるをえない。まず、いずれも原作と脚本がニコラス・ピレッジ名義のギャング映画である。そして、どちらの作品でもロバート・デ・ニーロが狡猾な裏稼業の男を、ジョー・ペシが怒りを抑えることのできない暴力的なギャングを演じている。さらにどちらも、栄華を謳歌しているギャングの姿と、そこに乗り込むFBIとその後の波乱が描かれる。『カジノ』を『グッドフェローズ』のリメイクと捉えた評論家にとっては、こうした類似点は受け入れがたいものだったかもしれないが、少なくとも映画ファンはまたこの暴力的な裏社会に戻れることに大喜びした。『カジノ』はまた、繰り返しの鑑賞に耐える傑作であり、娼婦とそのヒモを演じたシャロン・ストーンとジェームズ・ウッズの演技も素晴らしい。ただし、テレビ向けにセリフを編集したバージョンは見るに値しない。悪態の数々がなければ、それは『カジノ』とは言えないのだ。

6. 『キング・オブ・コメディ』

80年の『レイジング・ブル』で大成功を収めたスコセッシは、イエス・キリスト役にロバート・デ・ニーロを迎えて『最後の誘惑』を撮りたいと考えていた。一方、シリアスな作品が続いてうんざりしていたデ・ニーロは、コメディを作ろうとスコセッシに提案する。そうして完成したのが、トーク番組の人気司会者に執着するコメディアン志望の男を描いた『キング・オブ・コメディ』である。スコセッシは当初、司会者役にジョニー・カーソンを起用したいと考えていたが、最終的にはジェリー・ルイスがキャスティングされている。スコセッシ作品にしては珍しく、このブラックコメディは観客の多くに困惑をもって受け止められたが、評論家からは概ね高く評価された。しかし、本作以降の30年のキャリアのなかで、スコセッシがほぼシリアスなドラマ作品しか作っていないことは、付け加えておくべきだろう。

Translation by Mari Kiyomiya

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