2015年注目すべき秀逸アルバム15選 

テネメント 『プレデトリー・ヘッドライツ』
Tenement/Predatory Headlights
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高く積み上がったアンプから鳴り響くギターと、昔風のラジオから流れるオルタナティヴ・ロックのメロディからなる、ひたすら偉大なポップ・パンクのレコードだ。
テネメントは10年近く、ウィスコンシン州のアップルトンで演奏を続けてきた。この『プレデトリー・ヘッドライツ』で彼らが作ったのは、職務経歴書のような78分で25曲(『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』は1分以下)のアルバムで、『クロップ・サークル・ネイション』、『フェラル・キャット・トライブ』、チープ・トリック風の『ガーデン・オブ・セクレタリー』など直球でキャッチーな曲で埋められている。これに『ア・フライトニング・プレイス・フォー・ノーマル・ピープル』のような騒々しいピアノのガラガラを9分続ける実験作も加わる。彼らはある部分でアフガン・ウィッグスやソーシャル・ディストーションが、トッド・ラングレンの『サムシング/エニシング』の解釈に挑戦した状況に似ている。1時間程度に短縮すると、年間最高のロック・レコードのひとつになっただろう。たとえその年が、2015年ではなく95年にちょっぴり近かったとしても。
− Jon Dolan

チェルシー・ウルフ 『アビス』
Chelsea Wolfe/Abyss
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PJハーヴェイが赤い妖婦のドレスを黒に替えたような、あるいは、ロードが純粋なヘロインを試したような、ダウナー系ロックの女性歌手、チェルシー・ウルフは5枚目のアルバムで、より暗く、より憂鬱な方向へ向かったが、同時に、妖艶さとセクシーさも増している。彼女のこれまでのレコードがいわば、灰色の日々で、ムーディーだが極限のモノクロームだったならば、『アビス』で見えるのは、ついに嵐の雲が破れ、空に稲妻が走る光景だ。『アフター・ザ・フェイル』や『マウ』のような衰退と崩壊の叙事詩は、歓迎された新しいダイナミクスの感覚を示す。一方で、ウルフの長く、今にも沸騰しそうなメタルとの戯れは、『アイアン・ムーン』と『ドラッグド・アウト』で美しく破滅する、純粋な心中物のロマンスへ変わる。『アビス』での彼女の声は、やり過ぎなほど、血を吐き、ことさらにヴィヴィッドだ。ウルフは泣き、叫び、高く舞い上がる。その結果、リスナーは彼女と共にある。 
− Brandon Geist

ヤング・グレートネス 『アイ・トライド・トゥ・テル・エム』
Young Greatness/I Tried to Tell Em
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まず、名前が最高!タイトルが最高!最高に熱望され、感動的で指を鳴らしたくなる、アトランタの2015年トラップ・シングルは、誰かの夢を支えるためにキッチンで身代わりになって働く話を描いた『ムーラー』だ(プロデューサー、ジャッツェ・プー)。最も気合の入ったポスト=ウィージーとなるニューオリンズのラッパー、テディ「ヤング・グレートネス」ジョーンズは、ハリケーン「カトリーナ」で破壊されたセヴンス・ワードの子どもの一人で、このためにヒューストンで避難生活を送り、関連するニュースによれば、前にルイジアナ州立犯罪者矯正局の世話になっていたとも。ミーゴス率いるクオリティ・コントロールからリリースされている彼のミックステープは、大胆で柔軟さを持つ詩的な活力と、他に何も選択肢が残っていなかった男の魅惑的な無愛想と空腹感、凝集感、緻密なサウンドだ。彼は共鳴するフック、フロウ、そして文句なしのヒートをどの16分音符にも詰め込んだ。以上が彼が18以上のトラックにわたってやっていることで、誤爆は実にわずかで、正真正銘、野心満々の最高傑作だ。 
− Charles Aaron

Translation by Kise Imai

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