ニール・ヤング、「隠れた名曲」人気ベスト10

Photo: (Rob Verhorst/Getty)

「渚にて」「エクスペクティング・トゥ・フライ」「ドント・ビー・ディナイド」をしのいだ名曲とは?

ニール・ヤングは過去50年間で山のように音楽をリリースしてきた。クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSNY)やバッファロー・スプリングフィールド時代の作品を含めれば、有名な曲、人気のある曲を披露しようと思えば、4時間のコンサートではとても足りない。とはいえ、そうした曲は、彼の全作品のごくごく一部にすぎない。「孤独の旅路」1曲につき、「ストリングマン」や「L.A.」といった名曲が20曲も見落とされていたりする。私たちはニール・ヤングのディープ・カット(マニアのみが知っている名曲)についての読者投票を募った。以下がその結果である。

投票の集計に際しては、さまざまなことを判断しなければならなかった。「オールド・マン」や「シナモン・ガール」への投票を除外するという判断は簡単だった。しかし「コルテス・ザ・キラー」「パウダーフィンガー」「シュガー・マウンテン」あたりをどうするかは難問だ。これらの曲は、いわゆるヒット曲ではない。しかし、後者の2曲は『ディケイド~輝ける10年』に収録されているし、「パウダーフィンガー」に至っては、ヤングが「シナモン・ガール」に次いで2番目に頻繁に演奏した曲なのだ。これらの曲には多くの投票も寄せられていた。しかし最終的に私たちは、こうした曲についても、ここで集計対象にするには有名すぎるという判断を下した。


10位 「エクスペクティング・トゥ・フライ」


ニール・ヤングが1967年5月にロサンゼルスのサンセット・サウンド・スタジオに入り、プロデューサーにジャック・ニッチェを迎えて「エクスペクティング・トゥ・フライ」を録音した頃、バッファロー・スプリングフィールドはまだ結成1年にして、すでにデス・スパイラルに突入していた。ニール・ヤングが加入と脱退を繰り返したせいでバンドメンバーは常に流動的だったし、ブルース・パーマーは訴訟対応に追われて音楽活動どころではなかった。ヤングも自分の作品に執心するばかりで、もはやバンドメンバーの中で「飛び立つことを期待」している人など、誰もいなかったのだ。この曲は「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の影響を受けてオーケストラを導入し、完成まで何週間もいじくり回された。シングルカットされたショートバージョンは失敗に終わったが、すでにヤングがこのバンドの枠に収まりきらない存在に成長していることは明らかだった。2003年の秋にヨーロッパで行ったソロのアコースティック・コンサート、『グリーンデイル』ツアーで演奏して以来、ヤングはこの曲の演奏をしていない。しかしヤングは、プロミス・オブ・ザ・リアルとのこの夏のツアーにむけたリハーサルで、この曲の共演につきあっている。

9位「渚にて」


1974年初頭に『渚にて』をリリースした頃のニール・ヤングは、気分が大きく落ち込んでいた。そのことは、このアルバムのB面の1曲目を飾るこのタイトル・トラックを聞けば明らかだ。歌い出しからして「世界が回転している。僕にそっぽを向かないで」だ。そこから歌詞はどんどん落ち込んでいく。彼はラジオ局のインタヴューに呼ばれていくのだが、なぜか「マイクの前で一人きり」にされ、町を出ることを決意する。「友達とバスに乗って、ド田舎へ向かう」と彼は歌う。「ひたすらに道をゆく。どこに向かっているのかはわからない」。彼の道は結局その年の後半、CSNYの悲惨なリユニオンツアーにたどりつく。彼の気分はますます冴えない。年末なってやっと、将来の妻になるペギー・モートンと出会い、そこから人生が好転していくのであった。1974年のCSNYのショーでヤングは「渚にて」を何度も演奏していたが、昨今ではすっかりご無沙汰になっており、1975年以降は2回しか演奏していない。1度は1999年にシカゴで行われたソロのアコースティック・ショー、もう1度は2003年にドイツのハンブルグで行われた『グリーンデイル』ツアーのアコースティック・ショーのことだった。

8位「吸血鬼のブルース」


1974年の作品「吸血鬼のブルース」でニール・ヤングは、「いい時代がやってくる。みんながそう言っている」と歌っている。「いい時代がやって来る。でもそれは、ゆっくりとやって来るという」。ギターに、60年代のザ・ロケッツ時代にクレイジーホースでも演奏していたジョージ・ホイットセル、ベースにはクレジットカードでヒゲをこすってクールな効果音を出しているティム・ドラモンドを迎えた「吸血鬼のブルース」は、『渚にて』収録の典型的なダウナーソングで、ヤングは自分自身を、精のつく血液を探し求める吸血コウモリになぞらえている。この曲は1974年のイーグルスのショーで一度演奏されただけだが、この夏のツアーに向けたリハーサルでも演奏されていた。

Translation by Kuniaki Takahashi

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