『ブラックスター』のキーボーディストが語る制作裏話

Photo by Deneka Peniston

ジャズ界のエース曰く「彼が最初の曲を口を開けて歌い出した時、急に実感が湧いてきたんだ」

デヴィッド・ボウイ本人はニューアルバム『★』(読み方:ブラックスター)のプロモーション活動を行わなかったが、関係者までもが沈黙を保つというわけではない。
ローリングストーン誌は2015年12月に、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティとサックスのダニー・マッキャスリン、ドラムスのマーク・ジュリアナへのインタヴューに基づいて、アルバム制作の裏話を掲載したが(※ローリングストーン日本版2016年2月10日発売号掲載予定)、その際にヴィスコンティは「キーボードのジェイソン・リンドナーは神がかっていた、どんな型破りのコードを頼んでも、ジャズ的な感受性で再現してくれるんだ」と語っていた。

リンドナーは実績十分のジャズ・キーボーディストであり、これまでにアヴィシャイ・コーエン、ダフニス・プリエト、クラウディア・アクーニャといった面々と共演している。我々はリンドナーに電話インタヴューを行った。

ーあなたは昔からのデヴィッド・ボウイ・ファンだったのですか? それとも最近になって聞くようになったのですか?

後者だ。僕は完璧なビーバップ狂だからね。子どもの頃はヘビメタ狂で、ティーンの頃にビーバップやブルースに入れあげた。そこからはあまり趣味を広げようとせず、ロックンロールを聴き始めたのは20歳台になってからだね。


ーあなたが最初に聴いたボウイのアルバムは?

『アースリング』だ。すごく好きなんだ。もちろん、80年代に『レッツ・ダンス』がヒットしたりしていたのは知っているよ。でもその頃はまだ、アウトサイダー的に聴いていただけだ。で、『アースリング』からはボウイを熱心にチェックするようになった。

ーあれは私も好きなアルバムですけれど、あまり人気のあるアルバムではないですよね。

実験的だからね。当時のアンダーグラウンド・ドラムンベースを取り入れている。

ーあなたが初めてボウイに会ったのは、1年半前にBar 55にボウイがあなた方を見に来た時ですか?

その時はボウイが来ていたとは知らなかった。知らなくて良かったよ。だって知っていたら、意識してしまっていただろうからね。

ーボウイが来ていたことはどんな風に知りましたか?

ライヴの後で、ダニー(・マッキャスリン)が「ボウイが客席にいた。これから何かやることになりそうだ」って言っていた。

ーその時はどう思いました?

そりゃ嬉しかったし興奮もしたけど、でも概して僕は、あまり高い期待は持たないようにしているんだ。これまでに何回もがっかりさせられてきたからね。こうした話は時々あるけど、結局何も起きないことも多い、スタジオでの僕らの仕事が、最終的にアルバムのリリースにつながるとも限らないからね。僕は見るまでは信じないタイプの人間なんだ。

Translation by Kuniaki Takahashi

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