アデルとダフ屋の総力戦、その内幕

Photo: (Sascha Steinbach/Getty)

世界ツアーを準備中の歌姫アデル。果たして、ダフ屋との攻防を制することはできるのか?

アデルのチームは、「可能な限り多くのチケットをファンが入手できるよう、全力を尽くしている」と、彼女のマネージャーが2015年12月に話している。
しかし、ソールドアウトしているアデルの2016年世界アリーナツアーにおける、ダフ屋との争いは大きな象徴的意味合いを持つ。

12月の週末に発表されたアデルの北米ツアーは、その日に1000万人がチケットを求めTicketmaster.comに一斉アクセスし、瞬く間にソールドアウトした。そして、そのチケットの多くが早々とStubHubやeBayといった再販サイトに出品された。なかには、シアトルのキーアリーナの1枚4000ドルするフロア席や、シカゴのユナイテッド・センターの1枚5000ドルする2階席なども含まれている。

「問題提起して改善を図ろうとしている、アデルのマネージャーの姿勢は素晴らしい」。アデルのヨーロッパツアーのチケットを取り扱った、イギリス・ノッティンガムに本社を持つSee Ticketsの最高経営責任者ロブ・ウィルムシャーストは、ローリングストーン誌に語った。「でも、果たしてその試みにどの程度効果があったのかは分からない。アデルのクローンをいくつか作る以外に、彼らに出来ることなどなかったと思う」。

ダフ屋排除を目指すアデルの試みは、ファン優先のアーティストたちの取り組みに続くものだ。ブルース・スプリングスティーン、マイリー・サイラス、トム・ウェイツ、メタリカ、AC/DCは、Ticketmasterの「ペーパーレス」システムを利用し、チケット購入者に公演会場に入る際、クレジットカードとIDの提示を求めてきた。一方で、トム・ペティはかつて、彼のウェブサイトを通じてダフ屋によって購入された何百枚にも及ぶチケットを無効にした。しかし近年、再販サイトが巨額を稼いでいることから、多くのアーティストがTicketmaster TM+やStubHubと組み、ダフ屋や仲介業者の手に渡すよりも、2次流通市場によって利益を得ている。「これまでチケット再販に付き物だった否定的な意味合いは、基本的になくなった」と、スプリングスティーンのマネージャー、ジョン・ランドーは2014年にローリングストーン誌に語っている。「一般の人々の多くは、これを受け入れている」。

Translation by Sayaka Honma

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