音楽史上最高のプログレ・ロック・アルバム50選

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35. バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ『自由への扉』(1973年)

プログレは英国で盛んだったが、このジャンルで最も革新的なバンドのうちいくつか(PFM、レ・オルメ、ゴブリン)はイタリアの出身である。バンコはフランチェスコ・ディ・ジャコモのオペラふうの怒鳴り声とヴィットーリオとジャンニのノチェンツィ兄弟による2人体制での表現豊かなキーボードが特徴的で、このジャンルのなかでいちばんユニークな存在だった。1972年の『ダーウィン』では6人組バンドによるロマンティックな迫力を披露したが、その翌年発表した『自由への扉』(「俺は生まれながらにして自由」の意味)ではよりクリーンな演出と洗練されたアレンジによる手法を完成させた。静かなバラード曲「私を裏切るな」から15分にわたるシンフォニック・ロック調の攻撃的な曲「政治反逆者の歌」といった曲が収録されたこのアルバムは最も純粋な形でロック・プログレッシーヴォ・イタリアーノを代表する作品だ。by R.R.

34. キャラヴァン『グレイとピンクの地』(1971年)

イングランド南東部に位置する大聖堂で有名な町カンタベリーは、ソフト・マシーンやゴング、キャメルなどの多くの印象的なバンドを輩出したが、そのなかでもこの町の牧歌的な特性をキャラヴァンほど上手く伝えたものはいなかった。この4人組によるサード・アルバムのタイトルとジャケットのアートワークは、古臭いフォークのメロディとベーシストのリチャード・シンクレアが「意味が半分しかないような大量の言葉」と呼んだ歌詞に合わせてロックを楽しむジャズ通のミュージシャンの間で迷ったような音楽によって中つ国の夕焼けを再現している。A面は「ゴルフ・ガール」やトールキンふうの「ウィンター・ワイン」、ボーイスカウトについてのシュールな話を展開する表題曲などの短く魅力的な曲が収められているが、B面は「7枚の紙ハンカチの踊り」といったフランク・ザッパふうのサブタイトルがついた8部構成の22分間の組曲「9フィートのアンダーグラウンド」だけに費やされ、ファズ・オルガンのソロが支配的に延々と続き、地獄へ愉快に楽しく転落して再び戻っていくような展開がなされている。by R.G.

33. トゥール『ラタララス』(2001年)

トゥールはサード・アルバムのリリースで、1992年に短期間でヒットを記録した反検閲ソング「ハッシュ」のような大胆不敵な歌詞の3分未満の曲というスタイルを放棄した。「ハッシュ」とは対照的な『ラタララス』の9分半にわたる表題曲は、拍子記号と歌詞のどちらのパターンも、シダ類から松ぼっくりといった自然界に数多く存在するらせん形状について説明するフィボナッチ数列をテーマにしている。音楽的に複雑でテーマも難解であり、バンドによるキング・クリムゾンのファン世界が含まれているにもかかわらず、アルバムは初登場1位を獲得し、世界中のドームやアリーナで大規模なツアーを実施するにいたった。「たいていのバンドは、成功するために型にはまったポップな歌を書くべきだと教えられてきた」と当時、ギタリストのアダム・ジョーンズはギター・ワールド誌に語った。「そういったルールで作られた曲を聴き始めれば、あなたはすぐに困ったことになるだろう」。by B.G.

32. カンサス『永遠の序曲』(1976年)

1970年代のヨーロッパはプログレッシヴ・ロックの震源地であったかもしれないが、プログレはアメリカの中心地においても確実に勢力を拡大していた。イエスやジェネシスの影響を受けつつ、まじめなサザン・ロックの熱意とスイングを誇りにしたカンサスの4枚目のアルバムは500万枚を超える売り上げを記録し、主に試合開始を告げる合図のようなオープニング曲「伝承」のおかげで人気を得た。しかし『永遠の序曲』にはこのクラシック・ロックの定番作品以外にもたくさんの曲が収められていた。「奇跡」や「黙示録」、6部構成でほとんどインストの「超大作」(第一部:「ファーザー・パディラと完全なるブヨの対面」)のような曲は、本格的なアリーナ・ロック技術の独特なサウンドとヴィジョンを披露している。アラン・ナイスターはローリングストーン誌のレヴューで次のように述べた。「『永遠の序曲』は、カンサスがアメリカのフレッシュな新人バンドのひとつとして、ボストンやスティクスに匹敵するレベルだということを保証する作品だ」。by D.E.

31. ルネッサンス『もゆる灰』(1973年)

ルネッサンスのアニー・ハズラムは、ジェファーソン・エアプレインやイッツ・ア・ビューティフル・デイなどのサイケデリック・ロック・バンド、そしてフェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンなどのイングランドのフォーク・ロック・バンドに刺激を受けて、男だらけのプログレッシヴ・ロック界に女性らしいエネルギーをもたらした。彼女はバンドの代表作である表題曲で、ラッシュのゲディ・リーが睾丸をパニーニ・プレスで潰しても出せないような高音を見事に維持したまま曲を締めくくっている。キース・レルフやジム・マッカーティによってヤードバーズの灰の中から誕生したこのバンドは、長年にわたり何度も根本的なメンバー変更を経験してきた。クラシックとフォーク、ロックを調和させる彼らの手法は、ほかのプログレ・バンドよりも伝統的な曲のセンスに優れており、この手法によってサビとそれ以外の部分の差を曖昧にしている。そして40年経った今でも、アニー・ハズラムはグイネヴィア(伝説的な君主アーサー王の王妃)のような物語を紡ぎ出し続けている。by W.H.

Translation by Deluca Shizuka

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